カゲツキくんは作り出した何かを全力で投下していきました。
二次創作系小説を書き散らかしつつ、個人的に興味深いホビー(TF系多し)について騒ぎ立てるブログだったのですが、最近では自分で何やってるのかよくわかってません。そんなカンジのブログです。
ほむらーど・グラス④~悪夢も、絶望も、あるんだよ
最初は杏さやメインで書く予定でしたが、いつのまにやらまどほむに挿げ変わっていました(

未読の方も既読の方も、お時間がございましたら、ほむらーど・グラス第一話第二話第三話をお読みなって下さいな☆綺羅星!!←




CAUTION!!
※魔法少女まどか☆マギカ本編に関するネタバレが含まれています
※このループでのほむらさんのまどかへの思いは無限に有限です
※このループでのキュゥべえはきれいなキュゥべえです
※キャラ崩壊が悲惨です
※さやかちゃん強い!さやかちゃんかっこいい!さやかちゃんかわいい!さやかちゃんry


以上の点を御理解いただいた上でお読み頂ければ幸いです。








『続いてのニュースです。×月×日の午後、見滝原市内の某病院で銃撃事件が発生し――』
 さやかは自宅のテレビで、上条恭介が何者かに撃たれたことを知った。シャルロッテ戦があった日に面会できなかったのは、それの治療を受けていたからだった。
 もし、自分の決断があと数日早かったら、恭介を撃った憎き襲撃者を血祭りに出来たことだろう。それなのに……、
『何もしていない貴女にそんなことを言う資格も権利も義務もないわ』
ほむらの言葉を思い出してしまい、自分の無力さを呪った。
 あのとき、まどかはほむらを説得してマミの命を間接的に救った。じゃあ自分は何をしたのか、マミの役に立てたのか。ほむらの言葉に間違いも偽りもなかった。ただただ、見ていただけ。
 恭介のことだってそうだ。ただ毎日毎日見舞いと言って病室に乗りこんで、音楽を聞かせて喋るだけ。いつか恭介の指が治ることを信じて、現実から目を背けてそうしてきた。でも、実際はただ恭介に会いたいというさやかのワガママでしかなかった。自分だけ楽しんで、いざ事実に気がついて泣いて終了。あまりに都合がよすぎる。これでは自慰と何も変わりはしない。
 でも今の自分にはどんな願いでも叶う機会が与えられた。たとえ自分の指が動かなくなっても構わない、恭介の指がそれで動くようになるなら。どうせ自分の指は何の役にも立たない。
 ただ、それでも迷いが残っていた。もしも契約で恭介の体が治ったとして、それを恭介はどう思うのか。ありがとうって言われてそれだけなのか。それとも、それ以上のことを自分に向けて言って欲しいのか。
 さやかの現時点での表面上の願いごとは『恭介の身体を完全に治す』ことだった。だが、この願いには裏があった。恭介に見てもらいたい、恭介に感謝されたい――そんな下心が、裏側に存在していることを、さやか自身しっかりと自覚していた。
 そこが、さやかを契約へと至らせない障壁となっていた。



 そんな障壁は簡単に壊れてしまうわけだが。



ほむらーど・グラス④~悪夢も、絶望も、あるんだよ



 まどかのおかげで、どうにかほむらに殺されずに過ごしているキュゥべえ。しかし彼を悩ませる案件が同時に複数発生していた。
 一つ目は、マミの失踪。まどかやさやかに信頼され、かつキュゥべえに対して最も親身であった彼女が見滝原を離れてしまうとは全く予想していなかった。魔法少女の人数が減ること自体大変なのだが、何よりほむらからキュゥべえを守ってくれる存在が一人居なくなってしまったことが非常に痛手であった。
 二つ目は、ほむらの言う『熟練の戦士』の存在。まもなく見滝原にその姿を現す魔法少女は、間違いなくほむら側に傾いているはず。ともすればキュゥべえに対して敵対的な態度で向かってくることは容易に予測できる。魔女退治を確実に遂行してくれる分にはありがたいが。
 三つ目は、まどかの魔女化時に発生する感情相転移エネルギーの発生量予測値。インキュベーター星の科学力をもってしても、そのエネルギー量を表現することが出来ないほどの莫大な量であった。間違いなく言えることは第二熱量法則的観点から見た宇宙の死を回避してもお釣りが来るような量であること。そして、こんな途方もない量の感情相転移エネルギーを産み出すような魔女が誕生したら地球はおろか平行世界の宇宙さえも滅亡してしまうということ。キュゥべえ個人としても、宇宙を死の危機から救う立場の者としても、彼女と契約するのは憚られた。しかし、確実に宇宙が救えるエネルギーを獲得できるという魅力を無視することはできない。
 一つ目の案件は、マミを信じる以外に対処法がなかった(テレパシーを飛ばしても無視された以上、特定は困難)。二つ目は、まどかに協力を求めなければ対処することすらできない。
 最も重要な三つ目だが、今のキュゥべえはまどかと契約したくなかった。あんなに優しい子を魔女にしたくないと思う一方で、宇宙の危機を救わなければならない義務感も彼の中にはあった。
 ジレンマに頭を抱えながら、キュゥべえは誰よりも優しく誰よりも強い、そして誰よりも厄介な少女である鹿目まどかの足元で授業をじっと聞いていた。



 とある繁華街の路地裏にて。赤い髪の少女が、見るからにチンピラ風の男たちをぶちのめしていた。鼻に正拳を叩き込み、股間を力強く蹴りあげ、鳩尾にボディーブローをお見舞いしていた。
「よぉ兄ちゃん達、泣き喚くティーンエイジャー犯すのはさぞ楽しいだろうなぁ?おいコラ、起きろクズ野郎!!」
「げふぉ!?」
 意識を手放しかけた男の顎をブーツで蹴り飛ばすと、爛々と赤く輝くソウルジェムを気だるげに左手でかざした。続いて左手を降ろしつつ右手を前に出すと、
「変身……!!」
蛇が獲物を食らうように右手首を勢いよくひねり心臓の手前まで下げると、魔法少女への変身が完了した。
 赤い装束を身に纏った少女は首の骨をバキバキと鳴らしながら、手にしていた槍の切先を男たちの股間に向けた。
「知ってるか?とある民族は戦争で負けた相手をレイプしたんだとさ。そいつの男としての尊厳を奪うためになぁ!!」
「やめてくれ!!わ、悪かった!!頼む、この通りだ!だから許してくれ!!」
「そんなんで許されたら正義なんか必要ねぇぇぇぇぇ!!!」

 股間から失禁するようにして血を流している男たちから金品を略奪した少女は、変身を解いて満足げにその場から立ち去った。
 繁華街を離れた少女が向かったのは、馴染みのある八百屋だった。
「おぉ、杏子ちゃんじゃないかい。今日は何作るんだい?」
「よ、おっちゃん!今日はさ、ハンバーグに添える野菜を何にしようかなーって思ってたんだけどさ、なーんも思いつかなくて」
 杏子、と呼ばれた少女は夕飯の献立を考えているらしく、店先に並んでいた野菜とにらめっこしていた。
「じゃあ好きなの持って行きな!」
「大丈夫だって、ちゃんと金払えるって」
「そういうことじゃねぇって、杏子ちゃんが毎日ウチに来てくれてるからさ、感謝の印ってことで受け取ってくれや」
「そーゆーことなら受け取るしかないじゃんか」
「はっはっは!いいから持ってけ!」
「あんがと、おっちゃん!」
 店主の好意を受け取った杏子は、どの野菜を持って行こうかと悩み始めた。
 そんな杏子を見て店主が感想を漏らした。
「杏子ちゃん、良い嫁さんになれるんじゃないのか?」
「何言ってんのさ、おっちゃん!あたしみたいなのの貰い手なんかいないっつうの!」
「それに安産型みたいだし」
「どこ見てんだよ~!」
 八百屋の店主と冗談を言い合うこの少女の名前は佐倉杏子。ほむら宅に居候している、『熟練の戦士』である。



 まどかはマミが住んでいたマンションの一室を訪ねた。部屋におかれた家財道具の少なさが、かつてここの主だった者の心の空白を物語っているように思えた。
 マミが失踪した原因はほむらにあったのだが、まどかは彼女が姿を消したのは自分のせいでもあると心を痛めていた。自分の無力さを、まどかは大粒の涙を流しながらマミに謝罪した。
 まどかがマンションのエントランスを出ると、ほむらが待ち構えていた。まどかはついさっきまで泣いていたことを悟られまいと顔を拭ったが、ほむらはとっくにそのことを知っていた。その原因も、理由も。
「貴女は自分を責めすぎている。巴マミは自ら破滅の道へと進んだ。私もそれを止めようとするべきだった。だから、責められるべきなのは巴マミとこの私。それと、巴マミは生きてどこかを彷徨っていられるのは、間違いなく貴女のおかげ。貴女は讃えられるべき行動をとった。それを非難できるものは誰も居ない。居たら私が許さない」
 ほむらは、ほむらなりの言葉でまどかを慰めた。まどかはほむらの真意を汲み取れなかったが、とりあえずうんと頷いた。

「あのとき、マミさんにほむらちゃんと一緒に戦って、って言うべきだった……」
「そうしたところで、巴マミが失望する運命は変わらなかった。でも、巴マミが命を落とす運命は回避され、貴女の運命は変わった。これは喜ばしいことだし、実際私は嬉しく思っている」
 夕焼けに照らされた帰り道を、まどかはほむらと一緒に歩いていた。もちろん、ほむらが嬉しく思っているのは、まどかが魔法少女になることに対して否定的な印象を持ってくれたこととこうして二人きりで歩いていることだけであり、はっきり言ってマミの生還は迷惑以外の何物でもなかった。ほむらの思考がまどか中心になってしまったのは彼女の体感時間でみると途方もないくらい昔の話であり、今更変えることなどできなかった。
「ほ、ほむらちゃんってさ……マミさんとは別の意味でベテラン、って感じだよね」
 ほむらは一瞬うろたえた。まどかがまさかタイムリープに気付いたのかと焦ったのだ。
「そうね、否定はしない」
 まどかの様子を見る限り、そうではないようだ。ひとまずは安心したほむらだった。
「昨日みたいに、誰かが死んじゃいそうになったり、それか本当に死んだりするところを、何度も見てきたの?」
「そうよ」
「何人、くらい?」
「常人なら気が狂ってしまうほどの人数よ」
 ぼかしはしたが、嘘偽りは全くなかった。さらに厳密に言うと、不可抗力で殺してしまった者や意図的に排除した者を含めるとその数は計り知れない。
「あの部屋、ずっとあのままなのかな」
「巴マミには遠い親戚以外に身寄りが居ない。失踪届けが出るのは当分先の話でしょうし、私が見滝原に居る限り彼女は戻ってこないはず」
「誰も、マミさんが傷だらけになったことに、気付かないの?」
「仕方のないことだわ。元々魔法少女はその特質上、孤立しやすいもの。それに、もしあのとき魔女に食われて死にでもしていたら、死体さえ残らず永遠に行方不明者のままになる。誰にも死を悲しまれることなく、忘れられてしまう」
 ほむらが淡々と事実をまどかに告げていると、まどかがまた泣き出してしまった。一体何がいけなかったのだろうとほむらは慌てふためいた。もちろん表情には絶対に出さないが。
「ひどいよ……!みんなのためにずっと独りぼっちで戦ってきたのに……!!誰にも気づいてもらえないなんて、そんなの、寂しすぎるよ……!!」
 まどかはどうやらマミを美化しているようだった。マミはみんなのために戦っていたのではなく、誰かに自分を認めてもらおうと、褒めてもらおうと戦っていた。結局は自分のためにマミが戦っていたことを知っているほむらはこのことを告げたくてたまらなかった。何としてもまどかの意識からマミを排除したかったが、そんなことをしてまどかを傷つけるわけにはいかない。そう判断したほむらは、マミを貶めることなく、かつ魔法少女を否定する返答をよこした。
「誰のためでもない自分自身の祈りのために戦い続ける契約を結ぶことで私達はこの力を獲得した。誰にも気づかれなくても、忘れ去られても、それは自業自得以外の何物でもない」
「……私は、忘れない!マミさんのこと、忘れない!絶対に、絶対に!」
「そう言ってくれる人がいるだけ、マミは幸せ者ね。羨ましいほどに」
「ほむらちゃんだって!!ほむらちゃんのことだって、私は忘れないもん!昨日助けてくれたことも、一緒に屋上でご飯食べたことも、絶対に忘れたりしないもん!!」
 まどかの優しさに、ほむらの涙腺が崩れかけた。何度絶望に打ちひしがれても、何度失敗しても、まどかはほむらの心を癒してくれた。一度きりじゃなく、何度も。数え切れないほどの絶望に埋もれそうになっても、数え切れない優しさが救い出してくれた。マミと同様、頑強な仮面で心の弱い部分を隠しているほむらも、これに対しては滅法弱かった。
「貴女は優しすぎる。その優しさは確かに誰かを救えるほどのものではあるのだけれど、場合によってはさらに大きな悲しみを呼び寄せることもあることを忘れないで。それこそ宇宙を覆うほどの悲しみを」
「えっ……」
「まどか、ありがとう。また明日」
 ほむらは、そのまままどかの前から姿を消した。
 ほむらが立っていた場所には、水滴が落ちていた。



 同時刻、見滝原病院のとある病室にて。
 包帯を身体の至るところに巻かれた恭介が、苛立ちをさやかにぶつけていた。
「手が動かないんだ…もう痛みさえ感じない。諦めろって言われたのさ、演奏を。先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって。僕の手はもう二度と動かない。奇跡か、魔法でもない限り治らない……そこにあの女が現れたんだ!そして僕にこう言った!」
『奇跡も魔法も存在しないわ。それを追い求めたところで、辿り着いた場所にあるのは悪夢と絶望だけ』
「そう言って、僕を撃った!身体の至るところを撃った!それで……手を撃たれても痛みを感じなかったときは絶望したよ……」
 とうとう泣きだした恭介の話を聞いて、さやかは確信した。希望を奪い、自信を砕き、絶望を植え付ける銃の使い手……暁美ほむらが、恭介を襲った恨むべき襲撃者であると。
 怒りに手を震わせながら、さやかは叫んだ。
「そんなの嘘だから!奇跡も、魔法も、ちゃんとあるから!!」
 さやかは決心した。魔法少女の契約を結ぶことを。
 恭介を救うため、そしてほむらを倒すために。

 さやかは病院の屋上にキュゥべえを呼び出して契約を迫った。しかし、キュゥべえの答えは拒絶であった。
「どうして!?どんな願いでも叶えるんじゃなかったの!?」
「可能さ、可能だけれど、今の君の精神状態ではすぐに魔女になってしまう!」
「べえさん、その辺の心配要らないから。今の私はびっくりするくらいクールだから」
「さやか、それは嘘だろう……君の心は怒りの炎が燃え盛っているじゃないか」
「べえさんだって、宇宙を救うためには契約しなきゃいけない。それで、私は願いごとの実現と力を望んでいる。利害は一致するはずじゃない」
「利害関係を超えた範疇で見れば、ボクは友達である君を人柱に――」
「いいからとっとと契約してよ!!私は恭介を助けたいの!!」
「……わかった。でも、本当にいいのかい?願いは一度きりで変更はできないし、後戻りも出来ない。当然、ほむらやマミのような運命が君に襲いかかるんだ。それでもいいのかい?」
「承知の上よ!さあ、私の願いを叶えて!この身体も魂も売り飛ばしてあげる!」
 キュゥべえは、さやかの暴走を止められなかったことを嘆きながらも彼女の魂をソウルジェムに変換して力を授けた。
 こうして、美樹さやかは無事に魔法少女へと生まれ変わった。

 自責の念にかられたキュゥべえはせめての罪滅ぼしにと、さやかが獲得した力について説明することにした。
「さやかの願いは上条恭介君の身体を治すこと、つまり癒しの願いでボクと契約した。君のソウルジェムは癒しの願いによって具現化されたから、癒しに特化した魔法を使えるだろうね。だからと言ってほむらみたいな無理や無茶が許されるわけじゃないけれど」
「流石に自分の腕を切ってまで戦おうとはしないよ……」
「そうそう。魔法少女としての強さを決める要素は三つあるんだ。一つ目は才能で、二つ目は意志や願いの強さ、そして三つ目は経験なんだけど、はっきり言ってさやかは全部足りない」
「それどういうこと?」
「すごく言い辛いけど、君に才能はあんまりないんだ……ごめん」
「じゃあ二つ目と三つ目でなんとかすればいいじゃん」
「狂気を感じるほどの強すぎる意志と自分の身体や能力を最大限利用して戦える知識と経験も、今の君は持っていない」
「そりゃあ確かに転校生にはかなわないだろうけど……でも、私にはアイツが持ってないものを持ってる」
「それは、何だい?」
「愛と正義よ!」
「確かに意志の強さにかかわるものだけどさ……」
 流石のキュゥべえも呆れた。まさか愛と正義で戦うだなんて言い出すとは思いもしなかったのだ。
「よーし、そうとなればこの正義の魔法少女さやかちゃんが、あの鬼畜外道をぶっ倒しちゃうぞー!!」
「さやか、待つんだ。ほむらの言っていた、『熟練の戦士』はどうする気なんだい?」
「転校生側に付くならマミさんに代わってお仕置きするし、私達に協力するなら一緒に転校生を倒す」
「……さやかの決意は固いんだね。わかった、ボクは君を信じるよ」
「ありがと、べえさん!」
 キュゥべえの心配事がさらに増えた。新米魔法少女のさやかである。



『人工衛星『音波』ヨリ『旅行者』ヘ。集団自殺ノ兆候ヲ確認』
「『旅行者』より『音波』へ。位置座標の特定を所望する」
『人工衛星『光波』より『旅行者』へ。緊急事態が発生しました。鹿目まどかの位置座標がロストしました。ロスト直前の位置座標は、『音波』の特定した集団自殺の兆候が確認された位置座標と一致』
「遅い!!早く座標情報を!!」
『人工衛星『音波』ヨリ『旅行者』ヘ。座標情報ノ送信完了』
「このまま攻撃フェイズに移行する!!」
『ご武運を。オーバー』
 流石の軍事衛星も、魔女の結界に飲まれた人間を追跡することはできない。つまり、何の前触れもなく位置座標の特定が出来なくなった人間は相当な確率で魔女に襲われたと考えて然るべきなのだ。そして軍事衛星がたった今位置座標がロストした人間がまどかであるということは、まどかが結界に飲まれたということ。ほむらは自身の監視の甘さに苛立ちを覚えつつ、特定した位置座標へ急行した。
 結界が確認された場所に到着したほむらは、不測の事態に備えてテレパシーで杏子を呼び出してから結界の中へと飛び込んだ。

 木馬とテレビのような物体が浮かぶ結界、デスクトップパソコン型の箱にその身体を詰め込んだ魔女と薄気味悪い人形の使い魔。それらを見たほむらの苛立ちは加速した。
 憧憬の魔女。かつてのループでまどかに攻撃を敢行した愚かな残りカスめ、と心中で罵倒するほむらは十字架状の奇妙な重火器を手にした。十字架の中心には透かし窓が設けられており、そこに指を差し込んで縦棒の長い方を使い魔に向けると、十字架が変形し、内部の機関砲が露出した。
 そうしている間に、使い魔たちが結界に引きずり込まれたまどかに触れようとしていた。
「私の希望に、まどかに触れるな!還るべき場所に還りなさい!!」
 ほむらの怒号と共に機関銃が吠えた。並の機関砲とは桁違いの威力を持つ十字架状の機関砲が吐き出す弾丸が使い魔たちに命中し、その身体をただの木クズに変えていった。
 魔女は使い魔が破壊される度に補充するが機関砲の発射速度に生産が間に合わず、あっという間に使い魔は全滅した。
 取り残された魔女との間合いを瞬間的に詰めたほむらは、箱を十字架で容赦なく殴りつけ零距離で機関砲を掃射した。吠える機関砲によって箱に穴を空けられ吐き出された魔女もまた、弾丸によってその身をすり潰された。
 体液をばら撒きながら墜落したかつて魔女の身体だった半固体の何かを撃ち続けるほむらは、結界が崩壊していることに気付かなかった。
 ほむらにとってまどかが全てだった。魔法少女になった動機も、願いも、希望も、全てはまどかのため。そんなまどかを傷つける全てがほむらの敵であった。
 結界が完全に崩壊したことにやっと気付き、流石にオーバーキルだと判断したのか、十字架の透かし窓から指を引き抜いて投棄するほむら。
 そんなほむらの立ち回りを見ていたまどかが、怯えながらもほむらに話しかけた。
「ほ、ほむらちゃん?どうしてここに?」
「魔法少女の運命に従って、魔女を狩っただけ」
「また、私を助けてくれてありがとう。ほむらちゃん」
「礼を言われるほどのことなんて、していない」
 このときのほむらは完全に油断していた。殺意を剥き出しにして接近している新しい魔法少女の存在を全く感知していなかったほどに。
「ハッ、まどかにデレデレしてるんじゃないよ!転校生!!」
「!?貴女は……!?」
 ほむらが殺意を感じ取るも時既に遅し。サーベルの刃はほむらの心臓を貫いていた。その様子はまるで第一回目の魔女狩り体験ツアーでのマミを彷彿とさせるものであった。バヨネットがサーベルに、マミがほむらに変化している程度の差異はあったが。
 襲撃者にして復讐者である魔法少女の正体は、
「愛と正義の魔法少女、さやかちゃん見参!さあ、あの世でマミさんに懺悔しな!」
新米魔法少女の美樹さやかであった。
 ほむらは口元から血を流しながら、さやかを嘲笑った。
「何がおかしいのよ!?」
 サーベルの刀身を素手で掴んで軋ませながらほむらは罵倒した。
「愛?正義?そんなものが本当にあるなんて本気で信じているの?馬鹿馬鹿しい。あの先輩にしてこの後輩あり、というべきね。ロマンで魔法少女が務まるわけがないじゃない」
「おい転校生、私をバカにしてもいい……でもマミさんをバカにするのは、絶対に許さない!!」
「絶望させてあげる、巴マミのように!!」
 あろうことかサーベルをへし折ったほむらに驚愕したさやかは、素早く握りしめていたサーベルから手を離してほむらとの距離をとると、マミのように大量のサーベルを召喚してコンクリートの床に突き刺した。
 対するほむらは先ほど投棄した十字架を回収し、機関砲の銃口をさやかに向けた。
「アンタは死ななくてもいいはずのマミさんを殺そうとした!それだけじゃなく、恭介に絶望と鉛弾を撃ち込んだ!絶対に許すわけにはいかない!」
「魔法少女は願いのために命を捨てる契約をするもの。巴マミに限らず魔法少女はみな『死んでいる』。貴女は何を勘違いしているのかしら。それに私はまどか以外の人間に構っているだけの余裕はない」
「黙れ!」
 さやかはサーベルを一対手に取ってほむらに突撃するが、次の瞬間にはほむらの姿は消えていた。かと思えば、さやかの頭上に出現していた。当然、機関砲は下に向けられていた。
「……黒き雨(ブラックレイン)」
 ぼそりと呟いたほむらはまたしても姿を消した。代わりに機関砲の弾幕がそこに現れた。さやかは状況を理解する暇すら与えられることなく、弾丸の雨に文字通り撃たれた。
 雨水ではなく自身の血でびしょ濡れになったさやかの身体は倒れ、ほむらは華麗に着地した。
「聞こえてるかどうか知らないけど、言っておく。勇敢さと無謀さは似て異なるもの」
「ほむらちゃん、ひどいよ……!!いくら心臓が弱いからって、さやかちゃんを殺すなんて!!」
「まどか、私が本気で美樹さやかを殺すとしたらこの手でソウルジェムを握り潰すわ。大丈夫、彼女は生きている」
 ほむらの言う通り、さやかは立ち上がった。そしてサーベルの切先をほむらに向けて力の限り叫んだ。
「アンタ、手加減したっていうの!?心臓を刺してやったのに、本気で私の相手をしなかったの!?ふざけんじゃない!!」
「死体の心臓を抉ったところで効果があるとでも?」
 さやかの怒りと殺意は臨界点を超えた。地面を力強く蹴ってほむらに接近したさやかは、手始めにほむらの両肩をサーベルで貫いて手を離しそのまま蹴り飛ばした。間髪入れず突き刺してあったサーベルを引き抜き今度は両太股に刃を突き立てて、さながら昆虫標本のようにほむらを固定した。
「これならどうだ!」
 しかしほむらのポーカーフェイスは崩れなかった。圧倒的に不利な状況に立たされたにも関わらず。そんな様子のほむらが気に食わないさやかはサーベルを引き抜いて手にすると、ほむらの腹部に突き立てた。
 それでも表情を崩さないほむらは血を吐き出しただけだった。
「とことん馬鹿にして!!何なの!?」
「杏子、出番よ」
 途端、さやかの身体に蛇のような何かが絡みついた。多節棍のような棒の先端に矢尻を取ってつけたそれに引っ張られたさやかは、為す術もなく引きずられてしまった。
「今度は何!?二対一とか卑怯よ!」
「抵抗しない相手を標本にするてめーが言えたことじゃないだろ」
 突如現れた、赤く長い髪をリボンで束ねた魔法少女、佐倉杏子がさやかをたしなめた。
「うるさい、アイツは血も涙もない極悪人よ!情けをかけてやる必要はない!」
「相棒が血も涙もないだって?ざけんなよ。あいつはああして血も流すし、夜な夜なあたしに気付かれないようにして泣いてんだよ!てめーも戦士なら、戦士らしく正々堂々と戦ってからモノを言いやがれ!!」
 ほむらは舌打ちをすると、身体中に突き立てられたサーベルを一本ずつ引き抜いて投げ捨てながらさやかと杏子の口喧嘩を聞いていた。
「アンタ、あのクズを相棒って言ったの!?あんな人間辞めたような外道が相棒だなんて、狂ってる!」
「外道、クズ?てめー何言ってんだ、あんなんでもアイツなりの正義を貫いている立派な戦士だ」
「誰かを足蹴にして願いを叶えることが正義?おかしいんじゃないの!?」
「じゃあてめーの願いを言ってみろ!何を願って戦士になったのか、胸を張って言えんのか?誇りに持てんのか?それだけを頼りにこれから戦い続ける自信はあんのか?」
「……っ!!」
 ほむらが全てのサーベルを抜き終わる頃には、さやかは杏子に言い負かされていた。応急処置的にサーベルによって出来た傷口を魔法で手当てすると、今度は対戦車ライフルシモノフPTRS1941を左腕のバックラーから取り出して構えた。照準はもちろん、さやかの眉間に。
 黙り込んでしまったさやかに説教しようとしていた杏子が、対戦車ライフルを構えたほむらに対しても怒号を飛ばした。
「相棒、てめーもてめーだ!誤解されるような立ち振る舞いばっかりしやがって!もう今日は晩飯抜きだ!どっかのホテルにでも寝泊まりしろ、いいな!あたしはこいつを戦士として再教育する」
「勝手に話を進めないで!あ、こら、降ろして!!」
 杏子は抵抗するさやかを、いわゆるお姫様抱っこと呼ばれる方法で抱きかかえるとどこかへ飛び立ってしまった。
 ほむらは舌打ちすると対戦車ライフルと放り投げた十字架をバックラーに仕舞って、いつものようにまどかに挨拶して立ち去ろうとした。
「まどか、また明日」
「ほむらちゃん待って!」
「……何?」
 これまで通りならそのまま黙っていたはずのまどかが、ほむらに待ってと言った。あまりにも珍しいのでほむらは足を止めた。
「さやかちゃんのこととか、言いたいこととか聞きたいことはたくさんあるんだけど、さっきの杏子っていう魔法少女が言ってた『晩飯抜き』ってどういうことなの?ホテルで寝泊まりって?」
「言葉通りの意味よ、まどか。嵐のように現れて熱帯低気圧のように去ったあの魔法少女、佐倉杏子は以前話した私の同居人でもあり、熟練の戦士でもある。彼女は恐らく私の自宅に美樹さやかを拉致監禁して説教をする気ね。おかげで私は今晩帰る場所がない」
「どうするの?」
「たかだか一日不眠不休で活動したところで何ら問題ない。そのためのソウルジェムだもの」
「そんなのダメだよ!死なないから眠らなくていいとか、食べなくていいとか、そんなの絶対おかしいよ!」
「まど、か……?」
 まどかはほむらの手を掴むと、どこかへ連れて行こうとした。ほむらはまどかの手を離そうとしたが、まどかがそれを許さなかった。
「ほむらちゃん、ウチに来て」
「そういうわけにもいかないわ」
「……私と一緒に居るの、イヤ?」
「違う!違うけど……」
「なら、大丈夫だよね」

 結局、まどかに押し切られる形で鹿目家で一晩を過ごすことになったほむら。もちろん嬉しいことには嬉しいのだけれど、家族団欒の空間に自分は相応しくないとも思っていた。
「ただいまー!」
「……おじゃまします」
 ほむらが鹿目家に招かれたのは実に数ヶ月、もとい数ループぶりであった。監視カメラを設置しに訪れはしても、こういう形で鹿目家に入るのは久しぶりなほむらは少しだけ目頭が熱くなった。
 ほむらを出迎えてくれたのは、まどかの父親、鹿目知久と幼い弟、鹿目タツヤであった。
「やあ、君がほむらちゃんかい?まどかの話してた通りの可愛い子じゃないか」
「ほーむー、ほーむー」
「……私なんて大したことありません。まどかの方が、断然可愛い」
「も、もう!ほむらちゃんったら!」
「まあ立ち話もこの辺にして、二人ともあがりなさいな」

 ダイニングに通されたほむらは、すでに酔いが回っていたまどかの母親、鹿目詢子に早速絡まれてしまった。
「まどかからよぉ~く話は聞いてるよ、ずいぶんとまどかにお熱じゃないの。もしかして、惚れてる?」
「同性の私から見ても、まどかは魅力的です」
「ま、自慢の娘だからね。でも手ェ出したら許さないからね?」
「私がまるでまどかの身体を目当てにしているような言い方は、その、止めて下さい……」
「ふふっ、ジョーダンだって」
「もう!ママもほむらちゃんも何言ってるの!」
「ほらほら、お客さんをからかわない」
「いーじゃーんかー、まどかの友達とかともお話したってさー」
 くだを巻く詢子を退場させ、知久はまどかとほむらに座るよう促した。二人が席に着いたのを確認すると、知久がほむらにこんな誘いをした。
「まだ夕ご飯食べてないんだろう?よかったら食べていかないかい?」
 確かに何かを口にするべきではあった。だがほむらは御馳走になるのは忍びないと辞退しようとするが。
「僕らはもう食べちゃったから、まどかと一緒にね」
 言われてみればまどかもまだ夕飯を食べていなかったことに気付いたほむらは、知久の提案を受け入れた。

「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
 ほむらが鹿目家の食卓に同席させてもらったのはこれが初めてではなかった。かつてのループで経験したことが一応はある。過去も未来も変わらず、とても明るく料理も美味しく、自分が居るべきでない場所であることを痛感した。
 食器を片付けながらそんなことを考えていると、今度はまどかからこんな魅力的な誘いが。
「ほむらちゃん、その……イヤじゃなかったらね、一緒にお風呂入ろうよ」
 今回の鹿目家の父娘は揃ってとんでもない誘いをしてくるものだ。嬉しくてほむらは泣きそうになったが、絶対に泣くまいと我慢した。
 ほむらは二つ返事で了承した。

「ほむらちゃんの身体、綺麗だね……」
 まどかがほむらの裸体をまじまじと見つめながら呟いた。さやかとの戦闘で出来てしまった傷は完治しておらず未だ残っているが、それでもほむらの、上等な人形のような美しさにまどかはうっとりしていた。
 ほむらはそんなことない、と否定した。
「私にそんな言葉は不釣り合いよ。それに、この身体は呆れるほど昔に死んでしまった」
「こんなに綺麗なのに、そんなこと言っちゃダメだよ」
「事実は変わらない。それに、受けてきた傷だって中途半端にしか修理してないから、はっきり言って醜いわ」
「もう、褒めてるんだから素直に喜んでよー」
 ほむらとまどかは互いに身体を洗いあった。じゃれあったり、くすぐりあったりしながら泡まみれになる二人の姿は年相応の少女らしさがあった。
 泡を洗い流し、二人一緒に湯船に浸かると、まどかがこんなことを聞いてきた。
「ほむらちゃんは、なんでさやかちゃんとも戦うの?魔法少女は、魔女を退治するんでしょ?それだったら、一緒に戦えばほむらちゃんもさやかちゃんも必要以上に怪我しなくても済むのに」
「美樹さやかは私への怒りに駆られて魔法少女の契約を結んだ。彼女は私を殺したくて殺したくてたまらないみたいね」
「マミさんは、居なくなっちゃったけどちゃんと生きてるのに……どうして」
「憧れていた先輩を私に冒涜されたから、かしら。私からすればわけがわからない、の一言に尽きる」
 さやかが魔法少女になる原因を作り出したのは他ならぬほむらであるが、まどかはそのことに気付かなかった。
「ところでさ、ほむらちゃん」
「何?」
「ほむらちゃんはどんな願いごとをして魔法少女になったの?」
 ほむらの顔がほんの一瞬だけ強張った。それから俯いて、水面に映るまどかの顔を見ながら、力なく語り出した。
「私は、ずっと昔から心臓病を患っていた。それだけでなく、ドジでマヌケで何もできない鈍臭い時期が、私にはあった。そんなときに、私はある魔法少女に出会った。黒猫の命を助けるために契約した彼女は自信に満ち溢れていて、まどかのように優しくて、どうしようもなく弱い私を励ましてくれた。私は彼女と友達になりたかった……それなのにぃ!!」
「ほ、ほむらちゃん!?無理しなくていいんだよ!話したくないなら、話さなくても」
「殺されてしまったわ……ワルプルギスの夜と呼ばれる魔女に。私はワルプルギスの夜を、そして私の無力さも恨んだ。それからキュゥべえと契約を結んだ。『彼女のような優しい子を死なせない、強い自分になりたい』という願いで」
「ごめんね、ほむらちゃん……辛いことを思い出させちゃって」
「だから!まどか、私は貴女を守りたいの!キュゥべえのようなクズがのうのうと生きて、貴女のような優しい人が死んでいくなんて理不尽は、もう味わいたくない!お願い、守らせて……!!それだけが、私の生きる理由だから!」
「ほむら、ちゃん……」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……!!」
 ほむらはまどかに抱きつき、彼女の胸に顔を押し付けてすすり泣いた。

 積もり積もっていた物を吐き出したせいか、すっかり疲れてしまったほむら。まどかはほむらを自分の部屋に招き入れた。
「ほむらちゃんも、寂しい時はあるんだよね」
「いちいち寂しくなっていたら、魔法少女は務まらないわ」
「でも、今夜は大丈夫だよ。ほむらちゃん」
「……?」
「こんな私だけど、ほむらちゃんが守りたかった子とは違って自信なんてないけど、ほむらちゃんの友達になれるから」
「まどか……」
 ほむらの手を握ったまどかは、その手を胸に当てた。
「大丈夫、私は生きてるから。ほら、ちゃんと心臓も動いてるし、息もしてる」
「……あったかい」
「でしょ?それでね、ほむらちゃん。一緒に寝よ?ほむらちゃんが傍に居れば私は安心できるし、ほむらちゃんだって私が傍に居れば寂しくないよね?それに、あったかいし」
「えぇ」
「じゃあ、一緒に温め合いながら寝よう!」
「……ありがとう、まどか」
 今夜だけは、ほむらも戦うことを忘れることにした。目の前には守りたい人が居て、自分を受け入れてくれた。今だけは、その幸せを享受したって罰は当たらないはず。




 一方、ほむらの自宅では。
「ここ、アンタん家?」
「いいや。相棒の、ほむらの家だ。あたしはただの居候だ」
「居候っていうか、母親じゃないの?さっきのアレ」
 杏子に誘拐されたさやかがほむら宅の奇妙奇天烈なインテリアを不思議そうに眺めていた。ふと、逆さまに描かれた魔女と思わしき壁画が目に止まった。
「ねぇ、あの魔女っぽい絵は何?」
「アレか、アレは相棒が魔法少女になったきっかけらしい。あたしら魔法少女の間ではワルプルギスの夜って呼んでる化け物だ」
「きっかけ……?」
 杏子は作っておいたハンバーグ二人前を持ってくると、テーブルの上に置いた。奇怪な形をした椅子に座った杏子は、さやかにも座るように促した。
 さやかが座るのを見計らって、杏子は喋り始めた。
「昔のアイツはどういうわけかとんでもないドジだったらしくてな、友達が一人も居ないような可哀想なガキだったそうだ。そこにとある魔法少女が現れて、相棒と友達になった。初めての友達に心底喜んでいると、ワルプルギスの夜が現れた。当然、その魔法少女はワルプルギスの夜と戦ったわけだが、何せ出現しただけで何千人もぶっ殺せる化け物に勝てるわけなかった」
「結局、その魔法少女は?」
「死んだ。相棒はひどく悲しんだってさ。そしてあのブタ野郎と契約して魔法少女になったと。それから延々ワルプルギスの夜を追い掛け回しているそうなんだが、出現した地域の魔法少女たちと協力して戦って、その都度自分以外の魔法少女をみーんな死なせちまった」
「まるで死神じゃない」
「だからあたしを相棒に選んだんだとさ。そう簡単にやられなくて、腕の立つ魔法少女だってあたしのことをやたら褒めてたね」
「そう、なんだ……」
「とりあえず、食うかい?あたしお手製のハンバーグ」
「毒とか入ってないでしょうね」
「相棒をキレさせたのにあんなピンピンしてるてめーが、毒盛られたくらいで死ぬとは思えないね。それに毒を一度冗談半分で飲み水に盛ったら頭を吹き飛ばされそうになったから、ぜってー入れないことにしてる」
「あー……あいつならほんとにやってそう」
 さやかが苦笑しながら、じゃあ頂いちゃおうかな、と言った。おう、食え食え!味はあたしが保証する!と嬉しそうに反応する杏子。
「やっぱりアンタ母親でしょ」
「うるせぇ、あんなヴァイオレンスな娘を産んだ覚えはない!それにあたしはぴっかぴかの処女だよ!」

 ハンバーグをつつきながら漫才のようなアホらしいやりとりを交わすうちに、さやかと杏子はすっかり打ち解けていた。
 綺麗に食べ切ると、さやかは満足そうにごちそうさまと杏子に言った。
「いやぁ、最初は極悪人が来るのかなー、なんて思ってたけどね。こんな美味しいもの作るアンタが悪い奴には思えないよ!」
「どーだ、美味かっただろ?」
「うん!……ところで、アンタの名前は?私知らないんだけど」
「あたしだっててめーの名前なんざ知らねーよ。それと、あたしの名前は杏子、佐倉杏子だ。てめーは?」
「私は美樹さやか、さやかでいいよ」
「おう、よろしくな!さやか!」
 『戦士として再教育』などと言っていたはずの杏子はさやかと握手を交わした。
「ねぇ杏子」
「んあ?」
「アンタ、さっきから転校生……じゃない、ほむらのこと相棒って呼んでるけどさ」
「あぁ、それがどした」
「アイツがこの街に来てからやったことは全部知った上でそう呼んでるわけ?」
 杏子は、あ゛ーと唸りながら考えこんでしまった。
 考えがまとまったのか、杏子は口を開いた。
「キュゥべえをぶち殺そうとしてしくじったこと、巴マミを殺そうとしてしくじったこと、あとはてめーを仕留め損なったことだろ?って、アイツ失敗してばっかじゃねぇか!」
「バッカじゃないの」
「だぁれがバカだ!?」
「アンタも、アンタの相棒もよ」
「どこがだ?アイツは、願いのためなら何でもするってあたしに言ったくせに、失敗してばっかじゃ戦士の名折れじゃねーか」
「違う!!そこじゃない!」
 さやかは声を荒げた。
「殺そうとしたのよ!?罪もない命を、奪おうとしたのに、なんでそんなことが言えるの!?」
「口先だけで力の伴わない正義なんか要らねぇ!!そんなんで命が救えるか?誰かを守れるか?出来ねーなら、いっそ悪になるのも手なんだよ」
「わ、わけわかんない……!」
 杏子は物わかりの悪いさやかに呆れたのか深いため息を吐いた。そして説教を始めた。
「いいか、例えばさやかの正義が『弱い人たちを魔女から救う』としよう。てめーから見た善悪の判断は、まずてめーの正義に似通っているかどうかで判断されるわけだ。そこへ、相棒……ほむらが出てきた。アイツの正義は……まどか、だっけか。その嬢ちゃんを『守ること』だったとしたら、どう判断する?ほむらの正義は正義か悪か」
「んー……ただ『まどかを守ること』だけなら正義なんじゃないかな」
「だろうな。だが、アイツの本当の正義は『どんな犠牲が出ても構わないから、まどかを守ること』だとしたら、これも正義って判断するか?」
「厳しい……」
「要するに、お前から見た悪は必ずしも悪じゃねぇ。本当に悪かどうかを最後に判断するのはてめーの仕事だけどな、てめーの正義とは真逆の正義だってあることも忘れんな。それと、てめーの正義が誰かの悪になるかもしれないこともな」
「じゃあどうすりゃいいのよ」
「簡単だよ」
 杏子は自身のソウルジェムをさやかに突き付けながら答えた。
「胸張っててめーの正義が一番正しいって言って、認めさせんだよ。わからねー奴が居たら、てめーの正義を貫け。それさえやってりゃ理解される日が来る」
「じゃあ、アンタはほむらの正義を正義だと思うわけ?」
「胸張って正しいって言ってる限り、貫いてる限りはな。ただ、失敗を重ねているから今アイツが貫けてるかどうかは定かじゃないが」
「何が正しくて何がそうじゃないのか……よくわかんない」
「そのうち、わかるようになるさ」
 杏子はポケットからポッキーの箱を取り出して開封すると、
「まあ、頭使うの苦手なら糖分とれよ。ほんとはショ糖よりブドウ糖の方がいいんだけどな」
さやかに手渡した。
「あ、ありがと……」
 さやかがポッキーを受け取ったのをしっかりと見た杏子はしてやったり、といった表情を見せた。
「おーし、栄養源受け取ったな!このままオールナイトで戦士としてお前を再教育してやる!」
「はぁ!?ちょっとそれどういうこと!?」

 結局、さやかは杏子の説教を夜が明けるまで延々と聞かされてしまうのであった。



つづく?



~もうあとがきのタイトルでふざける要素ねーよバーロー~

 なんというか、字数数える気すら起きない程に長いです。
多分15000強でしょうか……
杏子ちゃんが可愛過ぎるのがいけない(

 実は、タイトルの『ほむらーど・グラス』にちなんで、原作からキャラクターの設定を一部反転させています。鏡(グラス)なだけに。
・ほむら:シャルロッテ戦前のマミの心配をしているなど、一応はまどか以外のことも気にかけている→まどかのためなら多少の死者や自身の負傷は構わない、ハイールまどか
・さやか:QBに才能ないと言われていた→本気を出していないとはいえ猛爆を受けながらもほむらをあと一歩のところまで追い詰めるくらいには強い
・杏子:悪役っぽく登場して改心した途端に死ぬという典型的なキャラ→杏子ちゃん最初からマジで聖女で戦士で聖母
・キュゥべえ:有無を言わさず死ね→誠実で嘘をつかなくて凄まじく人間臭いし挙げ句人間よりまともな倫理観を持っている

 あと、やたらまどかちゃんが積極的なのは、アレです。彼女なりの恩返しです。
何もできない役に立てない自分のために腕を切り飛ばしたり昆虫標本にされたりしているほむらの力になりたい……。
その結果が混浴と添い寝ですよ!私の欲望剥き出しですよぜってーあやまんねぇ!!(殴
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コメント
5人の魔法少女で2人組を作ったら杏さや、まどほむになってマミさんがハブられてしまうのはよくある事w
設定の反転、そういう事だったのですね。皆原作から反対になった部分があると。

ほむらちゃんの弱い部分が出ましたね。まどかとの関わりが深くなりそうです(´∀`)
しかし杏子ちゃんかっこいいし可愛い。ずるい←

武器の要望、反映して下さったんですね。ありがとうございます!m(__)m
2011/07/19 (火) 06:03:10 | URL | クチナシ #-[ 編集 ]
最近もはやゲーマーから廃人ゲーマーに成りましたWWW
ゲームに難易度を求め始めたからな(爆) 東方楽しいっすW

そういえばパニッシャーのロケランは使わないのか? かなりオーバーキルになるがW
パニッシャー実際は2m近くて数百キロあるんだけどマジカルだから大丈夫だよな(お
まぁ脚本の虚淵もトライガン好きだから大丈夫だろうなW
2011/07/19 (火) 12:20:02 | URL | XXNEX #-[ 編集 ]
Re:
>>クチナシさん
そしてキュゥマミが成立すると……まあ阻止しますが←
マミさん、まどかも反転した部分がありますが、ストーリーに関わってくるので深い事は言えませんw

この世界、強さに比例して隠している弱い部分が大きくなる法則が何故か存在しているのでまだまだ弱い部分隠してます、ほむらちゃん。まどかとの関わりについてはYESと答えます。
杏子ちゃんまじ万能

焼夷手榴弾もそのうち出しまっせ!
2011/07/19 (火) 15:22:02 | URL | 影月 #-[ 編集 ]
Re: タイトルなし
>>XXNEXさん
だめだこいつはやくなんとかしないと(棒読み

ロケットランチャー使ったらジェムに被弾してガチでさやかちゃん死ぬwww

ウロブチも好きなんだね、トライガン……
2011/07/19 (火) 15:23:28 | URL | 影月 #-[ 編集 ]
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