カゲツキくんは作り出した何かを全力で投下していきました。
二次創作系小説を書き散らかしつつ、個人的に興味深いホビー(TF系多し)について騒ぎ立てるブログだったのですが、最近では自分で何やってるのかよくわかってません。そんなカンジのブログです。
ほむらーど・グラス⑤~後悔なんて、してばかり
伏線張るのって辛いな、サム…

あと、なでしこジャパン優勝記念ってことで機動戦艦ナデシコ再放送されないかしら
あ、無理スか



はいそんなわけで早いものでもう第五話を迎えてしまいました『ほむらーど・グラス』!
ちなみに全十一話構成です。もっと減るかもしれませんが。
あと今回はリンク貼りませーん(





CAUTION!!
※魔法少女まどか☆マギカ本編に関するネタバレが含まれています
※このループでのほむらさんとまどかさんは二人で一人の魔法少女です
※このループでのキュゥべぇはきれいなキュゥべえです
※キャラ崩壊が悲惨です

以上の点を御理解いただいた上でお読み頂ければ幸いです。






 ほむらの自室には、これまで戦ってきたループで獲得した『記念品』が飾られていた。ある瞬間を切り取って収めて残す能力を持った『記念品』……要するに写真なのだが。
 女子中学生が二人仲良くポーズを取っている、というよくある構図の写真ばかりが飾られているのだが、よくよく見ると不思議な点がある。
 一人は桃色の髪の少女で、もう一人は黒くて長い髪の少女が写っている。問題なのは黒髪の少女の顔の部分にあった。
 この部屋にあるほとんどの写真に写っている黒髪の少女の部分だけが意図的に消されているのだ。ペンで塗り潰されたり、破かれたり、あるいはひび割れて見えなくなっていたり。

 ご存知だろうか。写真立てなどに収めた写真の人物の上にひびが入ると、ひびが入った人物に不幸が訪れるのだ。



ほむらーど・グラス⑤~後悔なんて、してばかり



 河川敷の芝生の上で、さやかが寝そべりながら冴えない顔のまどかに話をしていた。自分は魔法少女になったことを後悔していないことをアピールするため。
「いやー、熟練の戦士と友達になったし、転校生をぶちのめしたから気分いいわー!爽快、爽快!」
「さやかちゃんはさ、怖くはないの?」
 孤独に悩んでいたマミ、身も心もすり減らして戦い続けるほむら。まどかの知る魔法少女は強さや華やかさの裏に影を落としていた。さやかもきっとそうなのだろうかと心配していたのだ。
「そりゃあちょっとは怖いけど……昨日の奴は転校生が一瞬で狩ってたから、私でも十分倒せたはず。もし、あのとき転校生が先に来てなくて、私が魔法少女になってなかったら、まどかと仁美、友達二人も同時に亡くしてたかもしれないって。そっちの方がよっぽど怖いよ」
 そうは言っても、さやかが契約するきっかけになったのはほむらへの怒りであり、さやかとしては恐怖を覚える暇などなかった。
「だーかーら!何つーかな。自信?安心感?ちょっと自分を褒めちゃいたい気分っつーかね。何せ、あの悪の魔法少女暁美ほむらが仲間を呼ばなきゃいけないくらい追い詰めたんですから!……まー、舞い上がっちゃってますね、私。これからの見滝原の平和はこの魔法少女さやかちゃんが、ガンガン守りまくっちゃいますからねー!」
 明らかにさやかが何かを隠しているのを、まどかは見抜いていた。マミの場合は優雅な立ち振る舞いで、ほむらの場合はポーカーフェイスで、それぞれ隠していた。さやかの場合は、虚勢である。
「後悔とか、全然してないの?」
「そうねー。後悔って言えば、迷ってたことが後悔かな。どうせだったらもっと早く心を決めるべきだったなって。あのときの魔女、私と二人がかりで戦ってたらマミさんも見滝原を離れずに済んだかもしれない」
 まどかは、もしそうだとしたら今頃どうなっているのかを想像した。
 まず、マミとさやかは間違いなくほむらを襲う。ほむらも杏子を呼んで応戦し、場合によっては本気で殺そうとするに違いない。そうなってしまえば死人が出るような展開になることは確実だった。
 悲しげな表情のまどかに、さやかはこう言い切った。
「私はさ、成るべくして魔法少女になったわけ。命を擲ってでも叶えたい願いごと、見つけたんだもの。戦い続ける運命を背負ったって構わない、そう思えるだけの理由があった。そう気付くのが遅すぎたのがちょっと悔しいだけ。だからそんな辛そうな顔しなくていいんだよ」
 立ち上がって背伸びすると、さやかはこう言い残して立ち去った。
「さてと、じゃあ私はそろそろ行かないと。どこに行くかは、内緒だぞ?」



 見滝原市内某所のゲームセンターで、ほむらと杏子がDDRで対戦していた。
 二人ともキレのある動きでギャラリーを魅了しつつ、着々とスコアを稼いでいた。
「杏子」
「昨日のさやかのことか?ありゃあ喧嘩両成敗するべきかと思って……」
「違う」
「じゃあなんだ?」
「ワルプルギスの夜の出現予測日まで残り二週間を切った」
「……何故わかる」
「腐れ縁よ」
 時折アクロバティックな動きを披露してギャラリーを沸かせる杏子は、ほむらの『腐れ縁』という言葉がひどくしっくり来るもんだなと、そう思ってしまった。
 ほむらの戦う理由の何割かはワルプルギスの夜の撃破である以上、ワルプルギスの夜との縁は切りたくても切れない。だから、腐れ縁。
「で、その腐れ縁をどうするのさ?」
「今度こそ切る。一片の欠片も残さずに」
「おー、こわいこわい」
「そこで、貴女に頼みたいことがあるの」
「んだよ、水くさいこと言いやがって。今更どうした、あたしら相棒だろ?悪と正義の魔法少女コンビ、ってな」
「ワルプルギスの夜を殺したら、私はこの街を去る。だから、私の代役が務まるように美樹さやかを教育して」
「……どういうことだよ」
 演奏終了と同時に決めポーズをとると、ギャラリーから拍手が巻き起こった。ほむらは髪をかきあげながらこう言った。
「言葉通りの意味よ」
「だから、なんで見滝原を離れるんだよ?まどかの嬢ちゃんは!?」
 ほむらは杏子の質問を無視して、ゲームセンターから出て行った。



 とある歩道橋の上で、ほむらとさやかが対峙していた。昨日の決着を着けましょう、とほむらがここにさやかを呼び出したのだ。
 呼び出されたさやかは、指定された場所に着くや否や直ちに変身してサーベルを構えた。ほむらを切り刻みたくてたまらなかったのだ。
 一方のほむらは未だに変身する素振りを見せなかった。当然、戦いたくてウズウズしているさやかのフラストレーションを高めた。
「ほら、変身しなさいよ!それとも何、あたしなんか生身でも倒せるとかいうわけ!?」
「………」
 さやかの挑発に一切の反応を示さないほむら。それどころか彼女の瞳には生気が全く感じられなかったが、さやかはそんなことお構いなしだった。
「だったら、私から行かせてもらうよ!っらぁぁぁぁぁ!!」
 さやかは手始めにほむらの左前腕を斬り飛ばした。バックラーから銃火器を取り出されることを警戒してのことだが、いくらほむら相手でも若干の抵抗はあった。刺すくらいならいくらでも出来たのに。
 続いて右肩にサーベルを突き刺して手放すと、新たにサーベルを二本召喚して今度は膝に一本ずつ突き刺した。ここまで抵抗どころか微動だにしないほむらに違和感を抱きつつも、未だ怒りが燻っているさやかは攻撃の手を緩めたりしなかった。
 突き刺したサーベルをめちゃくちゃに捻ると、不愉快な音を立ててほむらの膝が砕け、骨片や肉をこぼしながら千切れてしまう。とうとうほむらの身体が崩れて倒れるも、ほむらは悲鳴一つ上げない。このまま肢体をもっと分解してやろうかと思ってサーベルを振り上げたが、何故か萎えてしまった。
「なあ転校生、痛くないの?やってる私でも何だか痛いのにさ……何で痛いとも止めろとも言わないわけ?私、このままアンタのこと死ぬまで斬り続けるよ?」
「………」
「あっそ。だったらマミさんの仇討ちするかな……!!」
 さやかは倒れたまま動かないほむらの首筋に刃をあてがい、勢い良く斬り飛ばしてやろうとした。したのだが、腕が動こうとしない。
 さやかの苛立ちはほむらから自分自身へと向いた。
「何で斬らないの!?コイツはマミさんを傷つけた!恭介だって……!!コイツは許しちゃいけない悪の魔法少女なんだから、殺されたって仕方ないのに!私は正義を貫かなきゃいけないのに!なんで斬らないのよぉぉぉ!!」
 あてがっていた刃を首筋から離したさやかは、両手に持ったサーベルでほむらの身体を斬り刻み始めた。獣のように吠えながら、闇雲に斬りつけるその姿は魔法少女と言うより狂戦士(バーサーカー)と形容するべきだろう。
「うわぁぁぁ!!ああぁぁっ、死ね、死ねぇぇ!!」
 錯乱したさやかは、ひたすら叫んで、サーベルを振るって、返り血を浴びていた。心の片隅で、これが本当に自分が目指した魔法少女の姿なのかという疑念が湧くが、それでも止まらなかった。
 そんなさやかを止めたのは、親友のまどかだった。
「さやかちゃん!ほむらちゃんと戦わない、で……!?うっ、……」
 どうしてこの歩道橋でほむらとさやかが戦うことを知っていたのかは不明だが、まどかが突然歩道橋に現れた。だが、昨日の晩すぐそばで寝息を聞いていたはずのほむらがただの肉塊になりかかっていたのを見てしまい、思わず嘔吐するまどか。
「おぇ……、さ、さやかちゃん……はっ、どうして……?うげっ……」
「だ、大丈夫だって!私だって昨日これくらいやられてピンピンしてんだから、コイツだって死んでないって!」
 胃の内容物を延々吐き出しながら泣きじゃくるまどかを見て慌てたさやかは、手にしていた血まみれのサーベルを投げ捨てた。そして斬り飛ばした左前腕と両脚を拾って切断面にあてがうと、癒しの魔法を使って修理(正しくは治療だが)を始めた。
 さやかはひどく後悔した。なんでこんなことしたんだろう、と。自分はまどかを守れるだけの力を手に入れた。その力を使って自分は何をしたのかと思えば、まどかを泣かせた。守るんじゃなかったのか、さやか?と自分を責めた。
 憎いほむらをどうして治さなければならないのかとも思ったが、自分がいかに未熟だったかを学ぶための授業料だと考えて落ち着かせることにした。でなければ治したそばからまたほむらを分解してしまうだろう。正義だと嘯いて、八つ当たりするんだろう。
「よし、これで治ったぞ!ほら転校生、アンタの大好きなまどかが待ってるぞ?」
 ほむらを元通りに治したさやかは、やはり微動だにしないほむらの身体を揺すってみた。
「……ほむら?おい、まどかがアンタのこと心配してるって。聞こえてないの?盗るよ?」
 まさかと思ってほむらの手首を掴むと、脈が感じられなかった。さやかは、自分の顔から血の気が失せるのを感じた。殺してしまった、と。
「なんで死んでんのよ……!!ほらぁ、起きなさいよぉ!!ちゃんと治してやったじゃん、起きてよ!」
「さやかちゃん、ひどいよ……こんなのって、ないよ!!ほむらちゃんだって、マミさんを殺したりしなかったのに……どうして殺したの!?傷ついたり、殺されたりしていい人なんて、居るわけないのに!」
 まどかの言葉は、さやかの得物以上の鋭さを持って彼女に刺さった。こんなんじゃ、胸を張って自分が正しいなんて言えない。貫いて傷つけたら、意味がない。さやかの覚悟と正義が、一気にぐらついた。
 さやかの心中など知りもしないまどかは、追い打ちをかけた。
「マミさん、残念に思うよね……。さやかちゃんが、魔女じゃなくて魔法少女を殺したって知ったら」
「……ッ!!」
 耐えきれなくなったさやかは歩道橋から飛び降りてどこかへ逃げ出してしまった。
 しばらく涙を流していたまどかだったが、さやかの気配が感じられなくなったことを確認すると口元を歪ませた。さやかは全く気付かなかったが、まどかの左中指にはソウルジェムが変形した指輪が嵌められていた。
「さやかちゃんって、ほんとバカだよね……ウェヒヒヒ」
 さやかを嘲笑いながら、まどかはソウルジェムを指輪から卵型の宝石に変形させて左手に出現させた。まどかが手にしているソウルジェムは、ほむらの瞳の色と同じ紫色をしていた。
 顔の前で両手を交差させると、その位置で両手首を一回転させた。そして両手を横に広げると、
「変身!」
 魔法少女へと変身してしまった。それも、ほむらのそれと全く同じ衣装の魔法少女に。
 まどかはほむらの制服の襟元を乱雑に掴むと、
「とりあえずこの身体は杏子に押し付ける。文句を言いつつも手入れしてくれるでしょうね、『いつもみたいに』」
 ほむらのように一瞬にして姿を消した。



 玄関の扉が開く音を聞いた杏子は、やっとほむらが帰ってきたのかと溜め息を吐きながら、悪態をついた。
「帰ってくんのがおせーぞ、相棒!せっかく作った餃子が冷めんだろ!」
 ま、さやかのバカとどつき合ってたんだろうけどな、と半ば諦めたように呟きながら玄関に向かう杏子。いつものようにボロボロのほむらがボケをかましてくるんだろ、という杏子の予想は玄関で倒れていたほむらによって覆されてしまった。
「……何してんだ相棒」
 生気の感じられないほむらを見た杏子は、首筋に指を当ててみた。脈は完全に止まっていた。一瞬だけ焦った杏子だが、すぐに冷静さを取り戻すと、魔法少女の脈が止まるようなことは普通は起こり得ないことを思いだした。魔法少女の脈が止まるような事態は、せいぜい二つくらいしか思いつかなかった。一つ目はソウルジェムの消滅。二つ目は結界の中で魔女に殺されること。二つ目は絶対にあり得ないと判断した杏子は、ほむらがソウルジェムを持っているかどうかを確かめた。
「相棒のソウルジェムが……ない!?」
 ポケットなど、隠していそうな場所は全て探したのに見つからなかった。魔法少女のエネルギー源にして魂であるソウルジェムがないということは、目の前に居るほむらがただの死体でしかないということになる。杏子は顔を歪ませて力任せに床を殴った。
「畜生!!願いを叶えるんじゃなかったのか!?ワルプルギスの夜をぶっ殺すんじゃなかったのか!?おい、こんなところでくたばってんじゃねー!起きろ、相棒!てめーが死んだら、あたしは誰の晩飯作ればいいんだよ!?ダァァァァァァッ!!」
 杏子は玄関の扉を蹴り開けると、そのまま夜の見滝原へ飛び出して行った。

 そんな杏子の様子を、まどかは遠巻きに見ていた。
「あーあ、やっちゃったね、ほむらちゃん。杏子ちゃん、あの調子だとまたチンピラ狩りするよ?」
 左手の甲に着けた紫のソウルジェムにそんなことを話しかけながら。もちろんソウルジェムが喋り出すようなことはなかったわけだが。



 帰宅したまどかは自室の勉強机に突っ伏していた。心配したキュゥべえはどうかしたのかとまどかに尋ねようとすると、まどかはキュゥべえに向って怒鳴った。
「いい加減にしてよ!ほむらちゃんとさやかちゃんの仲が良くないのを知っててさやかちゃんと契約したんでしょ!?キュゥべえを殺そうとするほむらちゃんが邪魔だからって、さやかちゃんに殺させるだなんておかしいよ!」
「待ってくれないか、ボクはそんなつもりでさやかと契約したんじゃないんだ!ただ、さやかが……」
「そうやってさやかちゃんのせいにして、自分だけ助かろうとしないで!」
「違うんだ、話を聞いてくれ!」
「元はと言えば、あなたが私と会ったせいでほむらちゃんとマミさんの仲が悪くなったんだよ!?友達になれるかもしれなかったのに、結局マミさんは居なくなった!全部キュゥべえのせいじゃない!」
「そ、それは……」
 まどかはキュゥべえに弁解の機会を一切与えることなく、キュゥべえを陥れた。
 普段は大人しいまどかがここまで怒りを露わにすることは全くと言っていいほどなく、それをキュゥべえは初めて見た。
 まどかは軽蔑するような目でキュゥべえを見下しながらこう言い放った。
「出てって、今すぐ。……出てってよ!友達を利用するようなキュゥべえなんか大っきらい!」
 明らかな拒絶の意志を突き付けられたキュゥべえは、俯きながら鹿目家から出て行った。
 キュゥべえが戻ってこないことを確かめると、まどかは満足そうに呟いた。
「あの家畜が、こんな簡単に追い出せるなんて……それはそれで怪しいけど、これでまどかの安全が完全に保障された」
 まどかはほむらの携帯電話を開くと、まどかが知るはずのない番号をダイアルして呼び出した。
『人工衛星『音波』ヨリ『旅行者』ヘ。作戦ノ成功ヲ確認。以後、暁美ほむらノ生体反応ガ再確認サレルマデ、鹿目まどかヲ『旅行者』トシテ認識スル』
『人工衛星『光波』より『旅行者』へ。作戦の成功をお祝いいたします。以後、暁美ほむらの生体反応が再確認されるまでの間、監視対象を鹿目まどかから暁美ほむらへ変更します』
「『旅行者』より『音波』および『光波』へ。了解した。オーバー」
 通話終了ボタンを押して携帯電話を閉じると、まどかはベッドに寝転がって独り言を言い出した。実際のところは独り言ではないのだろうけど。
「まどか、私は貴女の傍に居る……。これなら、貴女は安心できる。そして私も寂しくない。貴女の言葉がなければ、私はずっと泣き続けていたでしょうね。でも、もう泣かなくていい。だって、私の願いは叶ったから。……ごめんねまどか、私の本当の願いは『貴女との出会いをやり直して、貴女を守る私になりたい』だったの」
 まどかの目尻に涙がたまっていた。
 そこから、涙が一滴だけ頬を伝い、まどかは誰かにむかって謝った。
「最初からこうするべきだったんだね……。もっと早く私のソウルジェムをまどかに渡していれば、まどかは死ななくて済んだのに……」
 まどかは、そのまま目を瞑って眠りに落ちてしまった。

 まどかの言動が先ほどからおかしい理由は実に単純明快であった。それこそ呆れるような原因であった。
 それは――ほむらがまどかに『憑依』したから。
 魔法少女は契約の際に魂を具現化する。それがソウルジェムである。これが魔力の源であり、魔法少女の命でもある。魂を切り離された身体は死体同然になってしまうが、魔法少女はそれをソウルジェムで操る。そのため、魔法少女の肉体からソウルジェムが一定距離離れると肉体を制御できなくなり、ただの死体になってしまう。しかし、ソウルジェムが消滅しない限り魔法少女は生き続けることができる。ほむらはソウルジェムの特質を最大限利用したのだ。
 ソウルジェムを切り離す直前に自身の肉体にある程度魔力を与え、自律行動をとる人形にしたほむらは、密かにソウルジェムをまどかに託してさやかを呼び出した。ほむらはさやかの怒りを利用して人形と化した自身の身体を切り刻ませて、あたかも『暁美ほむらが死んだ』かのように見せかけた。そして、ソウルジェムでまどかの身体を操ってさやかに身体を修理させつつ絶望を植え付けると、今度は身体を確実に守ってくれるであろう杏子の元に運んだのだ。これで、魔法少女の間では『暁美ほむらのソウルジェムは失われ、死んでしまった』という事実が成立する。加えて世間一般では『心臓病持ちの可哀想な少女』で通っているほむらなら、長期間の欠席をしても不審に思われない。
 マミとの一戦でソウルジェムを着けた左前腕を切断し、腕だけでマミを攻撃したことから立てた仮説に基づいて実行した作戦だが、見事に成功した。
 これで、まどかは契約することなく魔法少女に変身でき、ほむらもまどかの危機をすぐに察知できるようになった。欠点としては、まどかの身体を操っている間のまどかの記憶があやふやになることと、ほむらの身体が常に危険に晒されることの二つが挙げられる。
 だがほむらはそんなことなど気にもしなかった。まどかと一緒に居られるのだから。



 新米魔法少女美樹さやかは挫けそうになっていた。
 願いは叶って指が治った恭介はヴァイオリンを弾けるようになった。力を手に入れて誰かを守れるようになった。仲間が出来て自信を持てた。仇敵のほむらから二度白星を奪った。それなのに。
「なんでこんなに苦しいのよ……ッ!!」
 何もかも思い通りだったはずだった。だが、さやかはマミから何一つ学べていなかった。さやかはマミと同様に力に振り回されていることに気付けず、マミはそれをほむらに利用されて破滅しかけた。そう遠くないうちにさやかもマミと同じ道を進むことになるだろう。
 そして、ほむらが死んだときのまどかの表情や言葉が、脳裏に焼き付いて離れなくなっていた。
『傷ついたり、殺されたりしていい人なんて、居るわけないのに!』
「そんなことくらい知ってるって!くっ……調子狂うなぁ!」
 この日、さやかは一睡もできなかった。



 熟練の戦士である佐倉杏子は苛立ちを隠そうとしなかった。
 浮浪者を寄って集って虐げるチンピラ共を、手加減することなくぶちのめしながら杏子は吠えた。
「イライラすんだよ!!クソ野郎!!」
 逃げようとしたチンピラの一人にドロップキックを浴びせると、ひたすら蹴り続けた。情けない悲鳴を上げるチンピラをひたすら蹴り続けていた杏子だったが、流石に飽きたのか動かなくなったチンピラ共を放置してその場から立ち去ってしまった。
 杏子がここまで苛立っていたのは、ほむらの死が原因だった。
 杏子はほむらの意志の強さに惹かれていた。人生の相当な時間をたった一人の魔法少女のために費やしてワルプルギスの夜と戦い続けてきた。周りの人間が次々と死んでいっても決して諦めることなく何度も何度も挑んだほむらを、杏子は戦士として尊敬していた。付き合いは浅くともほむらの強さも弱さも見抜いていた杏子は、だからこそほむらを相棒と呼んでいたのだ。
 志半ばで倒れてしまったほむらが、許せなかった。戦士らしく死ねと、悪態をつきながら杏子は悔しがった。
 偶然目にとまったドラッグのバイヤーにハイキックをかましながら、杏子は孤独な戦士の死を悼んだ。
 同時に誓った。ワルプルギスの夜は自分が殺すと。



つづく?



~あとがき・オブ・ザ・楽屋トーク~

まどか「お疲れ様ー!」
ほむら「お疲れさまどか」
さやか「乙でーす!」
杏子「おつかれちゃーん」
まどか「いやあ、第五話にしてほむらちゃんがずいぶん大胆な行動に出ましたねぇ」
ほむら「私達が、二人で一人の魔法少女よ!……って台詞はどうなったの?」
さやか「えっ、そんなセリフあったの?」
杏子「ソウルジェムはガイアメモリみたいに叫んだりしねーだろ。だから没られたんじゃねーの?」
まどか「玩具展開とかないからね杏子ちゃん。あの台詞は私の独断で没りましたー」
ほむら「まどか、このままだと私の呉キリ化が進んでしまう……!」
さやか「魔法少女狩りしてる時点であんたは充分キリカっぽくなってるから大丈夫だって」
杏子「呉キリ化ってギャグのつもりかよ。さみーわ」
まどか「あ、でも私は頼んでないからキリカちゃんっぽくないよね」
ほむら「ほっ……」
さやか「どんだけキリカ嫌いなわけ!?」
杏子「好き嫌いは感心しねーな。特に食いもんの好き嫌いはよ。ていうかぶっちゃけ食いもんの好き嫌い以外はどーでもいいや」
まどか「杏子ちゃんサバサバしすぎだよー」
ほむら「私をあんなメンヘラ魔法少女と一緒にしないで。私は純粋にまどかのために……」
さやか「だから、『ほむらーど・グラス』第一話から見返して来いって。充分メンヘラだから」
杏子「ところでさ、なんかあたしが戦士戦士うるさいのってどうしてなのさ?誰か知ってるか?」
まどか「あー、それね。ほむらちゃん解説よろしく」
さやか「丸投げしないで自分で説明しろって」
ほむら「杏子、この『ほむらーど・グラス』世界での貴女のキャラクター設定の元ネタが、『ビーストウォーズ』に登場した誇り高い戦士『ダイノボット』だからよ。そのうちダーダーうるさくなるわ」
杏子「ダイノボット……ってそれだとまるであたしが粗暴でガサツみたいな女だって言ってるみてーじゃねーか!」
まどか「杏子ちゃんひどいよ!そんな言い方ってないよ!」
杏子「なんであたしが怒られんだよ!?」
ほむら「ダイノボットは原始人に武器の使い方を教え、彼らを守るために二度死んだ勇敢な戦士。まどかはこのシーンを見る度に感動して泣くくらいにはダイノボットが好きなの」
さやか「あちゃー……こりゃ杏子謝んなきゃいけないわー」
杏子「知るか!!あたしん家にテレビなんざなかったんだよバーロー!!」
まどか「……ごめんなさい、とにかくごめんなさい」
ほむら「私からも謝るわ」
さやか「その、ね?うん、ごめん」
杏子「……だーっ!!あたしを憐れむような目で見るんじゃねぇ!!謝るなバカ!!」
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コメント
コメント
まさか憑依してたとは…。大気圏外に行ったり左腕切り離して操ったりと、積極的に新しい事に挑戦しまくりですねほむらちゃんw
ところでこの第五話においては、まどかの意思…と言うか精神は一度も登場していない、というので正しいしょうか?

さやかちゃんが順調に調子悪くなっていきますね…。
そしてもう杏子ちゃんはお姉さんもしくはお母さんと呼びたくなりますww
2011/07/20 (水) 12:52:55 | URL | クチナシ #-[ 編集 ]
Re:
>>クチナシさん
何度もループを繰り返しているだけではいけないと思った結果がコレなのですよww

まどかの意思、もしくは精神は冒頭のさやかとの会話の時点で登場しましたが、それ以外は全てほむらが行動を起こしています。
まどかなのかほむらなのかを判断する基準としては『ウェヒヒヒと笑っているか』、『ほむらの口調で突然喋り出すかどうか』、『変身するかしないか』を自分の中で設けています。全く参考になりませんが(爆)

本編では真実と現実に打ちのめされてたさやかちゃんですが、こちらの世界では力を持て余して調子を悪くしている辺りが何とも……。

ほむらちゃんは食生活滅茶苦茶そうな、杏子ちゃんは意外と料理上手そうなイメージがそれぞれあるので、同居させたらこんなことになりましたw
新ジャンル:杏子ちゃんまじ母ちゃん
2011/07/20 (水) 21:03:32 | URL | 影月 #-[ 編集 ]
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