カゲツキくんは作り出した何かを全力で投下していきました。
二次創作系小説を書き散らかしつつ、個人的に興味深いホビー(TF系多し)について騒ぎ立てるブログだったのですが、最近では自分で何やってるのかよくわかってません。そんなカンジのブログです。
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ほむらーど・グラス最終話 わたしの、最高の友達だったのに
東方ボーカルアレンジのムーンダスト(歌い手:みぃさん)聴きながらこれ書いてたらマジ泣きしかけてました。
ほむらちゃんまじほむほむ。

そんなわけで、感動のフィナーレです。嘘です。後付け設定をあとでうpするのでそれで絶望させてみせます(爆)



↓シリーズへのリンク集です
第一話
第二話
第三話
第四話
第五話
第六話
第七話
第八話
第九話
第十話



CAUTION!!
※このループでのほむらさんはまどキチ通り越してさらに上の存在と化しています
※キャラ崩壊が悲惨です
※オリジナルキャラのノリべえ/フレイムインキュベーターが登場します



以上の点を御理解いただいた上でお読み頂ければ幸いです。






 ワルプルギスの夜の残骸から、紺の豪奢なドレスを着た少女が這い出てきた。
 赤縁の眼鏡をかけ、長い黒髪を三つ編みにし歯車でそれを束ねた大人しめの少女は、太陽光を浴びて目を細めた。
「鹿目さん、どこですか……?」



ほむらーど・グラス最終話 わたしの、最高の友達だったのに



 ワルプルギスの夜を倒した私たちは、一度解散することにしました。
 私とほむらちゃんは、パパとママとタツヤの居る避難所へ行きました。さやかちゃんと杏子ちゃんとマミさんは、祝勝会の準備をするからと言って口喧嘩をしながらどこかへ行ってしまいました。
 避難所に着いた私は大泣きするママに叱られながら抱き締められました。ごめんなさいママ、心配かけさせちゃって。
 ほむらちゃんは何があったのかをパパに伝えています。全部は言えないけど、それでもほむらちゃんは出来る限り本当のことを話してくれました。ほむらちゃんの目が突然見えなくなってしまったこと、そのせいで身動きが取れなくなってしまったこと、そんなほむらちゃんのところに私が行ったこと。一通り話し終わったほむらちゃんはパパとママに向かって頭を下げると、
「私のせいで迷惑をかけてしまいました、ごめんなさい。ですが、まどかが私のところへ来てくれなければ、今頃私は生きていません。どうか、まどかを責めないで下さい。まどかは友達思いの、優しい子です」
そう言って、私を庇ってくれました。本当は、私なんかのワガママを聞いて死んじゃいそうになったのに。
 パパは頭を上げたほむらちゃんにこう言いました。
「ほむらちゃんは、親御さんはいるかい?」
「いいえ、一人暮らしです」
「そうか、それじゃあまどかが君のところへ行かなかったら一人きりだったわけだ」
「えぇ。辛かったです。何も見えず、誰にも頼れないのが」
「なるほど、それじゃあまどかは君の命の恩人、というわけだね」
「感謝してもしきれません」
 パパはほむらちゃんの言葉を聞いて、うーんと唸っていました。それから、ほむらちゃんと私に向かってこう言います。
「責める責めないはおいといて。とにかく二人とも無事で良かった」
 私が勝手に出て行ってしまったことを許してくれたみたい。ありがと、ほむらちゃん。



 それからすぐに避難勧告も解除されて、私たちは避難所の外に出れるようになりました。
 私は、ほむらちゃんのお家の片付けを手伝いに行くとパパとママに言ってほむらちゃんと一緒に避難所の外へ出ました。
 ほむらちゃんのお家に着くと、ボロボロのマントを着たマミさんが玄関で座り込んでました。いつになったら脱ぐんでしょうか。お気に入りなのかな、このマント。
 私たちが近付くとマミさんは何も言わずに立ち上がりました。
「暁美さん、鹿目さん。これから魔法少女の祝勝会の会場へ貴女たちを案内するわ。でもその前に話があるのだけど、いいかしら?暁美さん」
「何?」
「決着を着けたいの。この前はフェアと呼べるような戦いではなかったし、何より私としては先輩としての威厳を取り戻したいのよ」
「良いわね。今度こそ貴女の首を落としてあげる」
 この前みたいに、ほむらちゃんとマミさんの間にある空気が物騒なものになってしまいました。どうして二人とも仲良く出来ないんだろう。ついさっきまで一緒にワルプルギスの夜を倒すために戦っていたのに、また喧嘩するなんて。
 私はそんな二人を止めようとしました。
「待ってよ!ほむらちゃんとマミさんが戦う必要なんて……!」
「必要はないけど理由はあるもの」
「その通りよ。ソウルジェムの性質上、ストレスは死活問題になりかねないわ」
「それでもダメです!」
 ほむらちゃんとマミさんの視線が少し痛いけど、二人には戦ってほしくなかった私は勇気を振り絞ってこう言います。
「そんなに戦いたいなら、ゲームセンターのゲームでやってください!」
「へ……?」
「……え?」
 私の言葉を聞いたほむらちゃんとマミさんは二人とも目を丸くしました。それから、くすくすと笑い出しました。
「な、なんで笑うの!?私、そんなにおかしいこと言ってないのに!」
「ご、ごめんなさいまどか……ただ、ああして張り合っていたのが馬鹿馬鹿しくなってしまって」
「冴えた手ね、鹿目さん。それじゃあ暁美さん、祝勝会が終わったらゲームセンターに行きましょう」
 あんまり納得できないけど、二人とも笑顔になってくれたから、良かったのかな。
 


 マミさんに案内されて来たのは、隣町の教会でした。だいぶ傷んでる教会だけど、中からさやかちゃんと杏子ちゃんがじゃれあう声が聞こえてきました。
「こらー!お団子作ってんだから逃げるなー!」
「うるせー、あたしの髪で遊ぶな!つーかあたしの服どこやった!?着替えてくる!」
「アンタの一張羅なら洗濯したわよ!さぁ観念しなさい!」
「さやかぁぁぁぁぁ!!」
 呆れたように肩をすくめたマミさんは立て付けの悪い教会の扉を開け放つと、中で楽しそうにしているさやかちゃんと杏子ちゃんにこう言いました。
「美樹さん、佐倉さん?お楽しみのところ悪いんだけど、鹿目さんと暁美さんを連れてきたから準備して頂戴」
 マミさんの声に驚いたさやかちゃんは固まって、赤いチャイナドレスを着た杏子ちゃんは顔を真っ赤にしました。多分、というか間違いなくさやかちゃんは杏子ちゃんを着せ替え人形みたいにして遊んでたんだろうなー。
 ほむらちゃんが何の迷いもなく教会の中に入ると、チャイナドレスを着た杏子ちゃんに近寄ってこう問いかけます。
「杏子、祝勝会の御馳走は中華かしら?」
「なんでそうなるんだよ」
「だってチャイナドレス着てるじゃない、貴女」
「てめーのオツムはさやかと同レベルかよ!?中華だからチャイナドレスって、どういうことさ?」
 杏子ちゃんの言葉で、今度はさやかちゃんとほむらちゃんが睨み合いを始めました。今度のも止めようとしたんだけど、私が口を開こうとしたら二人とも変身してしまいました。
 さやかちゃんが剣を手に取り、ほむらちゃんもそれに対抗して鉄砲を取り出しました。
 気合のこもった叫び声を出して斬りかかるさやかちゃんだけど、ほむらちゃんは剣を左手の盾で受け止めてしまいます。両手が塞がったさやかちゃんのソウルジェムに鉄砲を向けたほむらちゃんはこう言いました。
「美樹さやか、貴女は相変わらず詰めが甘い」
「くっ……!」
 ほむらちゃんが引き金を引くと、鉄砲からお花がポンと飛び出しました。撃たれてしまうと思っていたさやかちゃんも、これにはびっくりしたみたいです。まさかオモチャの鉄砲で戦うだなんて、私も思いもしませんでしたし。
 さやかちゃんの間の抜けた顔を見ながら、ほむらちゃんはオモチャの鉄砲を投げ捨てて変身を解きました。
「本当なら実弾でソウルジェムを砕いてもよかったのだけれど、そんなことをしたらまどかと杏子が許さないでしょう」
「……徹頭徹尾、私のことを馬鹿にするんだね。また手加減するなんて」
 変身を解いたさやかちゃんがほむらちゃんを睨みつけます。私、どうすればいいんだろう。
「あら、そんなに殺して欲しいなら杏子に言えばいいのに。杏子ならどこまでも付いてきてくれるに違いないわ」
「心中しろっていうの!?イヤよ!」
「確かに心中はしたくねぇけどさ、その……、あたしならどこにでも一緒に行ってやるよ」
「杏子……!」
 ほむらちゃんは杏子ちゃんを引き合いに出すと、さやかちゃんの注意を杏子ちゃんに向けてその場から離れました。さやかちゃんと杏子ちゃんはそのまま二人だけの世界に入ったかのようにお互いを見つめ合ってます。
 溜め息を吐いたマミさんは、準備するから付いてきてと言ってどこかへ行ってしまいました。私とほむらちゃんもマミさんの後に付いていくことにしました。



 準備と言っても、杏子ちゃんが作ってくれたらしい料理をお皿に盛りつけてテーブルに運ぶだけだったので、簡単に終わっちゃいました。でも、つまみ食いはよくないよ?ほむらちゃん。
「流石ね、杏子」
「誤魔化してもダメだからねほむらちゃん」
「まどか、貴女も一口いかが?」
「共犯者にはならないよ?」
 笑いあいながら冗談を言える、そんな日常が帰ってきた気がしました。見滝原はボロボロだけど、それでもきっとそうなんだと感じます。
 テレビでしか見たことがないような御馳走の数々をテーブルに並び、教会の中を美味しそうな匂いが
漂います。椅子が無いから立ちながら食べることになるけど、それくらいは気にしなくてもいいかな。
 五人全員が揃って席に着いたところで、杏子ちゃんが話を始めました。
「あー、なんだ。あたしとしては、こうして知り合いでたったの一人も死人出さずにワルプルギスの夜をぶちのめして、こうやって全員揃ってメシが食えることをすごく嬉しく思う。あたしの作ったモンを美味そうに食ってくれる奴が居なくなると、寂しいから尚更だ」
 目を泳がせながら話していた杏子ちゃんでしたが、ちょっと辛くなってきたのか、
「おい、相棒!てめーが話せ!トドメさしたのてめーだろ?あたしじゃ上手いこと話せねーから任せた!」
ほむらちゃんに押し付けてしまいました。
 一瞬だけめんどくさそうな顔をしたほむらちゃんは、ちゃんと杏子ちゃんの役を引き継ぎました。
「これまで何度もワルプルギスの夜と戦ってきたけれど、死者が出なかった戦いはこれが初めて。貴女たちは強い魔法少女よ。私が保証する」
「……あのさー、折角の祝勝会なんだから、もーちょっと気の利いたこと言わない?」
「話の腰を折らないで美樹さやか。元々こういうことしか言えないのよ」
 ほむらちゃんはこほんと咳払いして続けます。
「確かにワルプルギスの夜は倒した。それで、魔法少女としての運命が変わったわけじゃない。でも、貴女たちが殺されてしまう運命は変えられた。それだけでも、私は嬉しい」
 ほむらちゃんはいつの間にかオレンジジュースが注がれた紙コップを掲げていました。よくよく見ると、他のみんなもジュースの入った紙コップが。
「私は、そのことを喜びたい。乾杯」
「おい、勝手に乾杯すんな!」
「いーじゃん杏子、珍しくほむらがまともなこと言ってるんだしさ」
「さやかちゃん、それちょっとひどいよ!」
「ほらほら、早く乾杯しましょう」
 ほむらちゃんにならって、私たちも紙コップを手にとると、元気な『かんぱーい!』という声が教会に響き渡りました。



 乾杯の後は、何て言えばいいのかわからないけど、すごく盛り上がりました。
 ほむらちゃんと杏子ちゃんが料理を取り合ったり、さやかちゃんが杏子ちゃんのコップにいたずらしようとして怒られたり、さやかちゃんが持ちこんだお酒を間違ってマミさんが飲んでそのまま寝てしまったり、ほむらちゃんが杏子ちゃんを羽交い絞めにしている間にさやかちゃんが杏子ちゃんをくすぐったり、もうとにかくメチャクチャです。これが、ハメを外す、っていうことなのかな。
 杏子ちゃんがほむらちゃんとさやかちゃんに挟み撃ちにされている様子を見ていた私は、すっかり熟睡してしまったマミさんをベンチに運ぶことにしました。先輩を床で寝かせるわけにもいかないですし。
 ふと扉の方を見ると、そこに眼鏡をかけた三つ編みの女の子がいました。多分、私と同い年かな。その子は紺色の立派なドレスを着ていて、まるでお人形さんみたいです。
 きょろきょろと辺りを見回していた女の子と目が合うと、女の子がぱああと笑顔を見せて私に駆け寄ってきました。そして私の手をとってこう言いました。
「鹿目さん、無事だったんですね!」
「ほむら、ちゃん……!?」
 女の子の声はびっくりするほど、ほむらちゃんの声とそっくりでした。もしかしたら、そっくりというよりも同じ声なのかもしれません。
「鹿目さん、私ね、ワルプルギスの夜になっちゃったの。でも、鹿目さんのおかげで元の姿に戻れたんだよ!」
「貴女が、ワルプルギスの夜なの?ほむらちゃん、が?」
「でももう大丈夫だよ!もう世界をメチャクチャにしちゃおうとも思わないし、壊して壊して壊しまくっちゃおうだなんて考えてないから!」
 信じたくなかった。目の前で笑顔を見せながら嬉しそうに話しかけてくれるこの子もほむらちゃんで、しかもワルプルギスの夜の正体がほむらちゃんだなんて、信じられない。改めてこの子のドレスを見てみると、ワルプルギスの夜にそっくりだった。
「鹿目さん、二人で頑張ろ?一緒に魔女を倒そう?魔法少女と魔女のコンビなら、出来ないことなんて――」
「まどかに触わるな、残りカスめっ!!」
 さっきまで杏子ちゃんを羽交い絞めにしていたはずのほむらちゃんがいつの間にか魔法少女に変身してて、眼鏡をかけたほむらちゃんの三つ編みを乱雑に掴んで私から引き離しました。ほむらちゃんはもう一人の自分の頭を鷲掴みすると、何度も床に叩きつけます。木で出来た教会の床が割れてしまうと、ほむらちゃんはもう一人のほむらちゃんの頭から手を離しました。もう一人のほむらちゃんの傷口から血の代わりに砂が流れ落ちる様子を見ながら、ほむらちゃんは鉄砲を取り出しました。お巡りさんが持っているような形をしたその鉄砲は、多分オモチャなんかじゃなくて本物。間違いなくほむらちゃんは怒ってる。
「二十五万三千四百四十回もまどかを死なせた貴女は、絶対に許さない」
「な、なんで……!?あ、あのときの鹿目さんに大嫌いって言われたのに……」
 反論したもう一人のほむらちゃんの胸を、ヒールで思い切り踏みつけるほむらちゃん。いつものクールさはどこにもありません。
「勘違いも甚だしいわね。私と貴女の命は虫にも劣るような代物よ。それが何?まどかに嫌われたくらいで絶望したの?たかがそれくらいで諦めたの?挙げ句の果てに魔女化だなんて、貴女はとことん愚かね。身の程を知りなさい、死んで当然の命のためにまどかの命を消費させるわけにはいかないの。たとえまどかに嫌われようとも、私は戦い続ければならない。それだと言うのに身勝手でまどかを殺すだなんて……暁美ほむらに生きる価値なんてないわ」
「でも……!」
「まどかを好きになれない私なんて死んでしまえばいいわ。いいえ、この場で殺す。貴女も、私も」
 次の瞬間、ほむらちゃんはもう一人のほむらちゃんの眉間を鉄砲で撃ち抜いてしまいました。撃たれたもう一人のほむらちゃんの身体が砂になって、一気に崩れました。砂浜で作ったお城を、壊す時みたいに。
 ほむらちゃんは肩で息をしながら、左手の甲で輝いているソウルジェムに鉄砲を向けました。
「まどかを傷付ける全てのものが私の敵!たとえ誰であろうと、まどかを傷付けようものなら死を以て報いる!……もちろん、私も例外じゃない」
「待ちやがれ!何してんだてめー!ソウルジェムを砕いたらどーなるかをあたしに教えたのはてめーだろ!?わかってんだったら止めろ!」
「魔法少女はこうしないと死なないの」
 杏子ちゃんはさやかちゃんを振り払って変身すると、槍を手にとりました。自殺するつもりのほむらちゃんを止めようとするけど、ほむらちゃんはそんな杏子ちゃんが手にしている槍を撃ち落としてしまいました。
「馬鹿野郎!さっきのあたしの話聞いてたのかよ!」
「貴女たちの活躍で、回り続けるだけの愚か者の物語に幕を降ろす準備が出来た、ありがとう。……そしてこの物語のピリオドは私が打つ!私の、死を以て!」
 杏子ちゃんの説得を無視したほむらちゃんはそう言うと、鉄砲の引き金を引いてソウルジェムを砕きました。
 オルゴールの上で踊る人形さんみたいに、ほむらちゃんの身体はくるくる回りながらソウルジェムの破片と砂を撒き散らして倒れてしまいました。着ていた魔法少女としての衣装も、砂になってその場に撒かれました。
 見滝原中の制服姿に戻ったほむらちゃんは、どこか遠くを見つめています。そっと手に触れてみると、ほむらちゃんがちょっとだけ冷たくなってました。手首にも触れてみたら、脈がなくなってて。どこかで聞いた台詞みたいでした。
 こんなに綺麗な顔のほむらちゃんが死んじゃった。大した傷も怪我もないのに、ソウルジェムが無くなっただけで、もう二度と動かないなんて。
 嘘ならどんなによかったのかな。実は私を驚かせるためのドッキリでした、なんて言ってほむらちゃんが『大成功』って書いた看板を持って起き上がったりしないのかな。それとも今まで起きた出来事は全部夢で、夢から覚めればほむらちゃんもさやかちゃんも杏子ちゃんもマミさんもキュゥべえもみんな元気で仲良しでした、なんてことにはならないのかな。
 どんなに祈っても、願っても、ほむらちゃんは動きません。
「起きてよ!ねぇ、ほむらちゃん!」
 肩を揺すっても、名前を呼んでも、返事をしてくれません。こんなの絶対おかしいよ、理不尽過ぎるよ。どうしてほむらちゃんが死ななくちゃいけないの、ねぇ。嘘だと言ってよ、ほむらちゃん。
「鹿目さん」
 マミさんが私の肩に手を置くと、ノリべえがマミさんの後ろに姿を見せました。
「前にも言ったわね。貴女が魔法少女になれば、どんなあらゆる人たちを救える神様になれるって。今こそ、貴女が契約を結ぶ時よ。暁美さんを生き返らせることさえ、貴女には容易なはず」
 マミさんの言葉を聞いて、私は思い出しました。こんなひどい現実を嘘に出来る手段があることを。ほむらちゃんの紫色の瞳をじっと見つめてから、私はマミさんに返事をしました。
「……わかりました、マミさん。私、契約します。今度は、わたしがほむらちゃんを――」
「このゲスがぁ!!」
 激怒した杏子ちゃんがマミさんを槍で殴りつけて吹き飛ばすと、私の制服の襟元に掴みかかりました。
「今なんつったんだよ、てめー……もっかい言ってみろ!んなこと相棒は、ほむらは望んじゃいねぇんだよ!何のためにアイツがソウルジェム砕いたのかわかってんのか?そいつはてめーのためなんだよ!アイツの努力を、悲しみを、痛みを、何もかもパーにする気か!?アイツの信じた正義に泥塗りたくる気か!?そんなのあたしが許さねぇ!!いの一番ぶっ潰してやる!!」
「杏子ちゃん……」
「アイツの死を、正義を冒涜するんじゃねぇ!!」
 声を荒げた杏子ちゃんは、私から手を離してノリべえに向き合うと、槍の先端を向けて言い放ちました。
「そこのでけぇ筋肉モリモリの変態野郎!まどかに契約させようとしたら、このあたしが解体して挽肉にしてやるからな!」
「おめェも営業妨害するってんならよォ……焼き殺してやるぞォ!」
 ほむらちゃんが死んで、杏子ちゃんが物凄く怒って、マミさんが暴走して、ノリべえは杏子ちゃんと喧嘩して……まるで、ほむらちゃんの目が見えなくなったときの戦いを繰り返してるみたい。
 さやかちゃんはマミさんと杏子ちゃん、どっちの味方になればいいのか迷っていて、私は結局どうすることもできなくて。すごく辛かった。
「まどか、君が契約する必要はない!」
 私の名前を呼ぶ声が聞こえてきました。私が魔法少女になることを嫌がっていたのはほむらちゃんだけではありませんでした。声を発したキュゥべえもそうでした。
 キュゥべえはノリべえの前に立って、信じられないことを言います。
「これまでのボクは、少女たちを騙し絶望の淵に落としてきた。でも、それも今日で終わりにしてみせる。今のボクには、ほむらの死を悲しんだり、まどかが魔法少女になってしまいそうになったことに憤りを感じたり、さやかが杏子に救われたことを喜んだりできる。つまり、感情があるんだ!」
「だァまらっしゃァァァァァァァいッ!!この期に及んで何を言いやがるかと思えば、妄言を垂れ流しやがってェい!!」
「妄言なんかじゃない!ボクの口は真実を語るためにある!」
 覚悟のこめられたキュゥべえの言葉を聞いたノリべえは押し黙ってしまいました。そんなノリべえにキュゥべえは続けました。
「ノリべえ……いいや、フレイムインキュベーター。ボクはインキュベーターを辞める。そして魔法少女としての契約を貴方と結ぶ。たとえそれが貴方に対する反逆だとしても、ボクは構わない。友達を救うためなら、ボクは何だってする!さあ、叶えてよ!フレイムインキュベーター!!」
「……はァ。こりゃあ立派な精神疾患じゃねェかよ、キュゥべえ」
 ノリべえは溜め息を吐くと、力いっぱい叫びました。
「そんなに叶えてェなら言いやがれェェェェェいッ!!てめェの魂を差し出すだけのォ、価値のある願いをよォォォォォ!!」
「まず最初に、暁美ほむらを生き返らせて欲しい。次は全宇宙に存在する魔女を魔法少女に戻して欲しい。そして、最後に全宇宙で戦い続ける魔法少女を、元に戻して欲しい。……これが、ボクが魂を差し出してでも叶えたい願い。さあ、ボクと契約して願いを叶えてよ!!」
「インキュベーターに、そんなことできるわきゃねェだろ……」
 ノリべえに願いを告げたキュゥべえの身体から、白く光るソウルジェムが三つ現れると、杏子ちゃんの変身が解けて、マミさんの黒ずんだ右腕が元通りになりました。さやかちゃんは、ソウルジェムがなくなったことに驚いて慌てています。
「すげェよキュゥべえ……インキュベーターがまさか奇跡を引き起こすなんざ、未だに信じられんわ」
 ノリべえは、キュゥべえの願いが叶ってしまったことに唖然としています。
 すると、倒れていたほむらちゃんがむくりと身体を起こしました。
「ん……?ソウルジェムは砕いたはずなのに、どうして?」
「キュゥべえがノリべえと契約したからだよ!」
「……そう」
 長い髪をかきあげるほむらちゃんを見て、私は凄く嬉しくなりました。これで、ほむらちゃんは普通の女の子に戻りました。魔女と戦うことも、何度もやり直し続けることも、ほむらちゃんはもうしなくてよくなったんです。
 喜ぶ私に微笑んでくれたほむらちゃんは、何故か右手を水平に上げました。このとき、ほむらちゃんの右手にはまだ鉄砲が握られていたことを、私は忘れていました。気付いたときにはもう手遅れで、ほむらちゃんは鉄砲を使ってキュゥべえの三つあるソウルジェムのうちの二つを撃ち砕いてしまいました。
 ほむらちゃんは鉄砲を投げ捨てると、ソウルジェムを失って弱ったキュゥべえにこう言いました。
「素敵じゃない、全ての魔法少女を元の人間に戻して、だなんて。おかげで魔法少女はその運命から解放されて、そして私は寿命を迎える。まさか最後の最後になって私を殺しにくるとは……思わなかった、わ」
 苦しそうに胸を抑えるほむらちゃんを、私は支えました。ほむらちゃんの肌は冷たくなりかけてました。
 それでもほむらちゃんは続けます。
「まどかなら、知っているでしょうけど……私は、ワルプルギスの夜が襲来したその日に、寿命が尽きるはずだっ、た……。はぁ、でも……ソウルジェムのおかげで辛うじて、生きてこれた。今の私には、死ぬ以外の選択肢なんて……ない」 確か、ほむらちゃんは心臓病が治らないまま退院し、心臓が止まりかけたところを契約した、と私に話していました。
 力なく私の身体にすがりつくように抱きついたほむらちゃんはひどく弱っていました。
「私ね……まどかと一緒に、普通の中学生……らしいこと、したかったんだ。それで、普通に死にたかった。でも、もういいの……まどかが、普通の中学生で、居てくれるなら……私はこのまま、死ねる」
「イヤだよぉ……!!死なないでよぉ、ほむらちゃんっ……!!」
 寂しそうな笑顔を見せたほむらちゃんはなんで、どうしてそんなにあっさりと諦めちゃうの?私のことは諦めなかったのに、自分のことはどうでもいいの?私に『自分を粗末にしないで』って言ったのはほむらちゃんだよね?なのになんでなの?
 弱々しくキュゥべえを睨んだほむらちゃんに聞いても、多分答えてくれないと思う。それに、今のほむらちゃんにそんなこと、私じゃ聞けない。
「ただ、私は……一人では死なない!インキュベーター、お前たちも……道連れにして、やる!願いを……叶えたこと、後悔させてやる!そして、二十五万……回以上、死なせてしまった、まどかの仇を……討つ」
 ほむらちゃんの衰弱はとてつもなく早くて、今にも事切れてしまいそうでした。私の背中に回したほむらちゃんの手の力は、全くと言っていいほど無くなっていました。見たこともないくらい弱ってしまったほむらちゃんをしっかりと抱きしめると、杏子ちゃんが歯を食いしばって涙をこらえながら近付いてきました。
「クッソ、どうして死に急ごうとすんだよ……!」
「……私は何も後悔してはいない」
「……ったくもう!てめーは口も態度も悪いしょーもねぇ魔法少女だったけどな、ガッツはある、いい奴だったよ……」
「最高の、魔法少女コンビだったわ……私たち」
「おうよ……!!」
 ほむらちゃんの声がどんどん小さく、掠れてきました。最期の力を振り絞るようにして、ほむらちゃんが私に囁きかけました。
「……私は、自分の祈りの……ために、生きてきた。そうして出会った、いいことも……悪いことも……みんな、私のせい。思い残すこと……と言えば、最期にまどかの笑顔を見られないことね……。でも、構わない……」
 私のほっぺにキスをしたほむらちゃんは、はにかむような笑顔を見せてくれました。
「ありが、とう……まどか。さよな、ら」
 そして、眠ってしまいました。もう二度と、ほむらちゃんは起きてこない。そう思うと、目頭が熱くなってきて、涙が溢れてきました。ほむらちゃんの穏やかな死に顔を見ていると、本当に寝ているだけな気がしてしまって、やっぱり嘘じゃないのかと思ってしまって、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまいました。
「どうして!?ねぇどうしてなの!?魔法少女を救うはずの願いで、なんでほむらちゃんが死んじゃったの!?おかしいよ!!確かにほむらちゃんは悪いこともいっぱいしてきた……でも!!悪いことと同じ分だけ良いこともしてきたし、最後は世界のために戦ったんだよ!?死ぬ必要なんてあるわけないのに!!」
「お、おい!まどかの嬢ちゃん!暁美ほむらが逝ったのはキュゥべえのせいじゃねぇ!」
「願いを叶えるとか言っておいて、ほむらちゃんは結局死んじゃった。生き返るって願い、叶ってないよ。……キュゥべえたちの、嘘吐き」
 私の心ではどうしようもなかった気持ちの矛先を、キュゥべえに向けてしまいました。私は、とってもひどいことをキュゥべえに言ってしまったと気付いたときには、キュゥべえに残された最後のソウルジェムが黒く濁っていました。キュゥべえは何かを後悔するような言葉を口にしていました。
「ボクは……嘘吐き以外の何かになれなかった。まどかやさやか、それにマミとだけじゃなくて、ほむらとも友達になりたかったのに……それなのにボクは、ほむらを殺してしまった。ボクは、ほんとに最低だよ」
 ソウルジェムにひびが入ってしまった、その時でした。
 ノリべえが、キュゥべえのソウルジェムを殴って壊してしまったのです。三つあったソウルジェムを全部壊されたキュゥべえは、くたりと倒れました。ノリべえは両目から涙のような濁った液体を流しながらキュゥべえの身体を抱きかかえると、そのまま空の彼方までジャンプしてしまいました。
 涙で視界がはっきりしなかった私の耳に、杏子ちゃんの言葉が飛び込んできました。
「相棒は、ほむらは戦士で、英雄だ。アイツのソウルジェムはあたしら魔法少女の英雄として、永遠に輝き続ける」







 ほむらちゃんが死んでしまったあの日からちょうど十年経ち、ワルプルギスの夜を一緒に越えたみんなで同窓会を開きました。
 大きいお腹をさすりながら相変わらずお菓子をぽりぽり食べてる杏子ちゃん、そんな杏子ちゃんに文句を言いつつも幸せそうな笑顔を見せるさやかちゃん、そしてソウルジェムをペンダント代わりに首からさげて、更に相変わらずボロボロのマントを着ていたマミさんが集まってくれました。

 この十年間、本当に色んなことがみんなの身に起きたみたいで、ずいぶん話が盛り上がってしまいました。
 杏子ちゃんと駆け落ちしたさやかちゃんは、そのままとある教会の本部を乗っ取って杏子ちゃんの願いを叶えてしまったそうです。杏子ちゃんは、その願いの内容を教えてくれませんでした。
 そんな杏子ちゃん、さやかの子を妊娠しちまった、だなんて照れ臭そうに頭を掻きながらのろけています。十年も経てば女の子同士でも赤ちゃんが出来るようになるんですね。
 マミさんは再び魔法少女になって、故郷を侵略されたノリべえと一緒に宇宙中を飛び回って戦い続けているとか。やっぱりマミさんはかっこよくて憧れちゃいます。



 私ですか?
 私は、あの後ずっと泣いていました。どうしてほむらちゃんが死ななきゃならないのか、死ななくてもいい道があったんじゃないのか、と。
 そのうち、泣き疲れた私は、せめて絵の中でだけでもほむらちゃんに幸せになって欲しいと思って、たくさん絵を描きました。
 杏子ちゃんと一緒に戦うほむらちゃん、さやかちゃんやマミさんと仲直りするほむらちゃん、黒猫さんに思わず顔をほころばせてしまうほむらちゃん、他にもいっぱい描きました。
 ほむらちゃんの絵を描くうちに、みんなにもほむらちゃんのことを知ってもらおうと思うようになりました。だってほむらちゃんは、辛くても寂しくても、私のために戦ってくれた自慢の友達だから。
 そんな私は高校を卒業すると、漫画家になりました。あの一ヶ月の間に起きた不思議な出来事の数々を、私は漫画にしました。ちょっとだけ内容は変えたんだけどね。
 そのおかげか、私は売れっ子漫画家の仲間入りを果たしました。ほむらちゃんのおかげかもしれません。

「こうして振り返ってみると、十年ってあっという間だったよねー」
「なんだかさぁ、もう三十路だって自覚ないんだよね。あたし」
「……佐倉さん、当時は二十歳だったの?」
「そーさ、ほむらの次に年上なのはあたしさ!」
「マミさん、コイツの今の名字は『佐倉』じゃなくて『美樹』なんで」
「あら、ごめんなさい。結婚していたのね」
「そう言えば、なんでさやかちゃんは私のこと結婚式に呼んでくれなかったの?」
「まどか、何のために私たち駆け落ちしたかわかってて言ってるの?」
「あ、そっか……ごめん」
「いーじゃねーかよ、そのうち披露宴やるんだからよ」
「それなら、私も呼んでくれるかしら?今回は宇宙のお土産持ってこれなかったけど、披露宴でリベンジしてみせるから」
「あ、だったら私は赤ちゃんのために絵本描くから!」
「いいねぇいいねぇ!持つべきものはやっぱりカッコいい先輩と優しい親友だね!」
「あたしから見ればみーんな後輩だけどな」
「ちょっと、杏子!」

 雑談しているうちに、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。
 また今度会おうね!と約束を交わした私たちは、それぞれの道へと戻っていきます。



 同窓会が終わって帰宅した私を、ある人影が出迎えてくれました。
 漫画家になってから、ほむらちゃんの住んでいたアパートを購入して、内装を変えずに一人暮らしをしているので、普通なら家には誰も居ないんです。でも、今は居るんです。
「まどか」
「ほむらちゃん!」
 やっぱり居てくれた。ほむらちゃんは気が付くと私の傍にいて、私が寂しくなって手を伸ばすと必ず手を握ってくれます。他の人には見えないみたいだけど、ほむらちゃんは私のために今もこうしてくれています。
「私はいつでも貴女を見守っている。だから、安心して」
「ありがとう、ほむらちゃん……」
 照明の光はほむらちゃんの影を作らないけど、それでもほむらちゃんはここにいる。声も聞こえるし、抱きつけば温もりも感じる。
 すごく嬉しかった。魔法少女にならなくても、奇跡は起きて。願いは叶って。ほむらちゃんの笑顔がまた見れて。



「ねえ、ほむらちゃん」
「どうかした?」
 美人さんでかっこよくて、強くて優しいんだけどときどき弱いところも見せて、こんな私を頼ってくれる、
「眠ってもいいかな」
「えぇ、なにも心配する事はないわ。私が傍に居るもの」
――そんなほむらちゃんが、私は大好きです。



おしまい



※ちょっとだけあとがき

 頬へのキスは親愛と満足感の表れ、だそうです。
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コメント
コメント
最後はまどか視点の話なんですね。まどかは最後まで魔法少女にはならなかったなぁ(´∀`)

ワルプルギスの夜は、別の時間軸のほむらちゃんだったって事ですか…。眼鏡装備時代の。しかしほむらちゃんは最後まで、まどかに害を成す存在を許しはしませんでしたねw

インキュベーター二人は、最後には感情を持つ事に成功したんでしょうか?だとしたらエネルギーを自分達で生み出す事が出来るかもしれませんね(´∀`)

まさかほむらちゃんの死因が病気によるものになるとは…。魔法少女でなくなった瞬間にこれだとは…。

まどか…見えてはいけないものが…?



一話目から読み続けてきたこのシリーズも、遂に最終回なんですね…。お疲れ様でしたm(__)m
まぁ4回ぐらい読んだんですがww
最後に残る設定を楽しみにしておきます(´∀`)
2011/08/25 (木) 12:17:47 | URL | クチナシ #-[ 編集 ]
Re:
>>クチナシさん
命がけの戦いの末、ほむらはやっとこさ願いを叶えることに成功したというわけですよー

私の中では、ワルプルギスの夜の本体部分に相当する巨大な歯車がほむらで、身体の部分は他の魔法少女を取り込んで構築した、巨大かつ特殊な魔女なんだというイメージがあります。
更に言えば、眼鏡装備なほむらは『暁美ほむらの真の姿』というイメージもあるので、正直なところ時代とかはあんまり関係なかったりします。
インキュベーターに関しては設定の方で詳しく記述するのでそちらでry

人間であれ魔法少女であれ魔女であれ、いずれにしてもほむらは早いタイミングで死を迎える運命にあったわけです。それを理解していたからこそ、第五話で「ワルプルギスの夜を殺したら、私はこの街を去る。だから、私の代役が務まるように美樹さやかを教育して」と言ったわけなんです。

まどかを出迎えたほむら(と思わしきもの)の詳細についても設try
2011/08/27 (土) 14:48:04 | URL | 影月 #-[ 編集 ]
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