カゲツキくんは作り出した何かを全力で投下していきました。
二次創作系小説を書き散らかしつつ、個人的に興味深いホビー(TF系多し)について騒ぎ立てるブログだったのですが、最近では自分で何やってるのかよくわかってません。そんなカンジのブログです。
心が持ちうる引力に関する考察
去る西暦2011年8月28日に開催された第四季東方螺茶会において頒布したパチュアリSSコピ本の中身を掲載します。
もう半年以上も経過していますし、掲載してもいいかなぁ、なんて思ってしまうのでした(爆)

一万字超えているため、ちょいと長めですがお楽しみくださいませ。









この作品を読むにあたって諸注意がございます。
よくお読みになってからお楽しみいただければ何よりです。

*この作品は上海アリス幻樂団の『東方project』の二次創作作品です。
*ところどころ独自の解釈に基づく設定の改変が見られます。
*同性愛(百合?)描写が見られます。
*その他多大なる問題を抱えています。






 やっぱりあの火力馬鹿は単純だけど強い。
「恋符『マスタースパーク』!!」
 緻密に練った作戦を元に人形たちを配置し、目の前で高らかと叫ぶ白黒が苦手とする種類の弾幕を展開したはずなのに、それら全てをグレイズしながら回避しつつレーザーで私と人形を繋ぐワイヤーを焼き切って無力化するアイツ、霧雨魔理沙。
「いいこと教えてやるぜ!都会派なアリス!」
 七色に輝く理不尽なサイズのレーザー『マスタースパーク』が私の視界を占拠した。
「有線兵器は時代遅れなんだぜ!!」
 反論する気はなかった。
 確かにこの作戦には欠点があった。人形の有効射程距離を考慮していなかったことだった。
『マスタースパーク』の直撃を受ける直前までこんなことを考えていた。
 
 手加減することは、対峙する者への不敬である。
『って、どっかの偉い奴が言ってたんだぜ。だから、私も全力で行く。でなきゃ戦ってくれた相手に失礼だしな』
 この魔理沙の言葉を聞いた私は、魔理沙らしいとは思った。
 だからといって私の人形たちを大破させる火力で攻撃してくるのは最早お遊びの域を超えている。
 とりあえず人形たちの残骸を魔理沙に回収させ、我が家まで運搬させることで、まあ大目に見てやることにしたけど。

 人形制作用の私の机がスクラップヤードになっていた。
 原因は紛れもなく、あの白黒魔法使い。……まあ、やられてしまった私も私だが。
 兎にも角にも、今現在の私がやらなければならないことは、このスクラップヤードを構成する人形の残骸をリサイクルして新しいタイプの人形の祖型として完成させること。新しいタイプ……それは、無線式遠隔操作型の人形だ。
 
 さて目標を掲げたものの、正直なところ何から着手すればいいのか全く考えていない。そもそも私の人形はワイヤーを経由してエネルギーを供給し、それを消費して動き、弾幕を展開し、人形の動きや展開する弾幕の種類はワイヤーを用いて制御する。だから魔理沙との戦闘でワイヤーを焼き切られた人形たちが活動停止に陥った。だが、動きや弾幕を遠隔制御するためのシステムは以前開発した半自律型人形のときに完成した物を改良すれば十分に実戦でも使えるはず(チルノに人形本体を破壊されはしたけどシステムデータそのものは回収できた)。
 となると残る問題はエネルギー源。魔理沙の『マスタースパーク』ほどの火力は要らないけども、本体である私からエネルギーを供給しないで一定時間パワーダウンすることなく活動し続けるには、やはり大量のエネルギーが必要になる。
魔力を蓄えられるタンクみたいなモノを造ることが出来ればこの問題も解決するはず。でも我が家にはそんなモノの造り方が記された本はない。
 非常にイヤなんだけど……行くしかないのね。紅魔館が抱える大図書館に。



 善は急げとは言うし思い立ったが吉日でもあるはずでしょう、と自分に何度も何度も言い聞かせる。
 でも足は動かない。このままやられっぱなしでいるわけにはいかないのに。
「お~い……どうしたんだい、そんな思い詰めた顔してさ」
「ひゃわっ!?」
 変な声出ちゃったじゃない!
 キッと私を驚かせた声の主に目をやる。
 紅魔館の門番である紅美鈴(ホン メイリン)は私に向かってこう言う。
「おっと、怖いカオしないでおくれよー。結構長いこと門の前で突っ立っていられたらそりゃ気にもなるだろう」
 私の物凄く複雑な心境なんてお構いなしとばかりにヘラヘラと言ってくれるじゃないのよ。
「アンタねぇ、私が……!!」
「おおっとそこまで、だ。お前さんが何を悩んでいたのかはだいたいわかった」
 信憑性に欠けているだろうということは重々承知の上で、面倒だけど聞いてやることにした。
「道に迷ったんだろ!!そうだ、そうに違いない!!」
 ほらやっぱり。
「アンタ馬鹿じゃないの」
「でも、今のお前さんの顔は怖くないね」
 まあくだらなさすぎて悩んでいる自分が馬鹿馬鹿しくなったっていうのはあるけど……もしかすると最初からコレを狙っていたの、この門番は?まさか、ね。
 美鈴はちょいちょい、と手招きする。なんだろう、と疑問符を浮かべてみる。
「花も恥じらう乙女、一名様ご案内……ってね」
「アンタ、言ってて恥ずかしくないの?」



「はいどうぞー」
 美鈴の声がした。
 あの門番、誰に断って私の図書館に人(若しくは人じゃない何か)を連れ込んでいるのよ。小悪魔を経由してあることもないことも咲夜に告げ口してやろうかしら。
「小悪魔」
 そんなわけで実行。とりあえず小悪魔を呼ぶ。若干の間を置いて私の使い魔である小悪魔が姿を現した。
 どうでもいいが、召喚してから一度たりとも小悪魔は本名を誰にも教えようとしない。呼び辛くてしょうがないのに。ほんとにどうでもいいけど。
「あ、お呼びですかパチュリー様。エロ本は光学迷彩掛けてあるのでお客様にはバレませんよ」
「ふざけてんの?」
「ふざけているのでしたら今頃わかりやすく目立つ場所にディスプレイして貴女が慌てふためくサマを片腹押さえながら観賞しますね」
 来て早々コレですか。こんなんでちゃんと伝言してくれるかどうか凄く心配なパチュリー・ノーレッジです。とりあえず無言で手身近にあった百科事典を手に取り小悪魔の頭を殴りつけて黙らせる。
「っつう~……」
「最初にアンタにやってもらいたいことは美鈴が案内したお客に帰ってもらうように言うこと。次にやってもらいたいことはこのことを咲夜に報告すること。あのハードボイルド気取りの未熟者め、手間がかかるわ」
「あ、すいません全く聞いていませんでした」
 次は賢者の石(注:精製直後なので高温)で殴ろうとしたが、
「ウソウソ!!嘘ですってパチュリー様!!」
小悪魔はどうやら面倒な嘘を吐いていたらしい。
「へぇ、じゃあ言ってごらんなさい小悪魔」
 イヤな予感しかしないけど、一応は確認してみる。
 小悪魔は私に背を向け、クラウチング・スタートの姿勢を取ると同時にこう言った。
「最初に私がやらなければならないことは美鈴さんが案内したお客様を全力でもてなすこと、次に私がやらなければならないことは美鈴さんがやったことは一切咲夜さんには報告しないことですよね!?」
 小悪魔は床を勢いよく蹴り、スタートダッシュを決めた。その加速を利用して翼を広げた小悪魔は図書館上空(地下にあるのだけれども)を飛んで逃げだした。



 図書館に入った私は、壁と見間違えるような、そびえる本棚を見回した。
 ココに来て正解だったみたいね。
 あの『欲しいものはなんでも借りる』魔理沙が頻繁に出入りして借りていくのだから、ココには私の人形を更にアップグレードするために役立つ魔導書もあるだろう。……とまあその程度の認識だったけど、やっぱり改めて見るとその蔵書量に圧倒される。
 まあエネルギー関係の本をさっくりと探しますか。

 一時間ほど経って、私は叫んだ。
「広すぎるじゃない!!」
 蔵書量に気を取られていた私は、この図書館が『大図書館』たる所以をよぉく理解した。そう、広すぎるの、ココ。
 まあこれくらい広くなきゃ山のようにある本を所蔵なんかできないし。
 それにしてもどれだけ本を引っ張ってきたのだろう、私は。魔導書の一冊がどれをとっても非常に分厚くて重い。こんな代物を毎日読み耽っていれば確かに博識にはなるはず。
 そこへ。
「こぁ?もしかして貴女が『お客様』?それとも『魔理沙さんの仲間』?」
 台車をガラゴロと押しながらやってきたココの司書らしき小悪魔が私に声をかけてきた。ていうか、魔理沙の仲間ってどういう意味なのよ。
「まあ、パッと見だけならガンガン盗るぜぇ!といった顔はしていらっしゃらないみたいですので『お客様』ということでいいのでしょうかね」
「ガンガン盗るぜぇって……私をあんな白黒と一緒にしないでくれないかしら?」
 なんだかちょっとイラッとした。
 小悪魔は台車に積んでいた最後の本を元あった場所に戻し、それから私に向き直った。そして、小悪魔は嬉しい提案をしてくれた。
「随分とたくさんおお持ちですね……あ、台車お貸ししましょうか?」
 
 

「あら、珍しい」
 美鈴が案内したのは人形使いのアリス。
 魔力に関する文献を山ほど台車に乗せて持ってきたアリスは、机の上にそれらをどさっと乗せた。
「貸出期間はどのくらいかしら?」
「持ち出し禁止よ」
「だったら、読むだけなら自由よね」
 椅子に座りながらアリスが聞いてきた。
「そうだけど」
 続いてノートを広げ筆記具を取り出すと、山から一冊引っ張り出してそれを開く。準備が整ったらしく、ノートに何か書き込み始めるアリス。本の内容を書き写しているのだろうか。
 ページをめくる手を止めた私はその様子をじっと見ていた。何故かと聞かれれば、魔理沙とは決定的に違う何かをこの魔法使いから感じたから。
 暫くすると、アリスは小さく欠伸をした。んー、と身体を伸ばしてから立ち上がり、帰り支度を始めた。
「じゃあ、また来るわね」
「なら、この本は取り置きしておくわ」
「ありがと」
 筆記具やノート類をバッグに詰めると、アリスは帰ってしまった。
 アリスの背中を見つめている私に、小悪魔が囁いた。
「パチュリー様らしくないですねぇ」
「うるさい、黙れ」
 私は反射的に持っていた本の角で小悪魔の眉間を殴ってしまったが、小悪魔が悶絶するのを徹底的に無視した。
 ……確かに小悪魔の言う通り、アリスが来てから数ページ程度しか読み進めていなかった私は、らしくないのかもしれない。

 どうやらアリスの「また来るわね」は翌日の行動を指していたらしい。
 小悪魔に案内されて私の元へ歩いてきたアリスはこう言った。
「また来たわ」
「お目当ての本ならそこよ」
「ありがと」
 本を開きノートを広げペンを動かす、何の変哲もない魔法使いの一挙手一投足が気になってしょうがない。魔理沙のせいで来客=襲撃という感覚が染みついてしまい、こんなに真面目なアリスに違和感を覚えたからとはいえ、またページをめくる手を止めてしまった。

 こんな日々が一週間程度続いたとある日。
 気が向いたので私自ら調合したオリジナルブレンドハーブティーを淹れていた。二十種以上のハーブを調合したせいで緑茶以上に濃い緑色になってしまったが、味や香りは抜群(流石に咲夜の紅茶には負けるけど)。
 と、そこへ常連の魔法使いがやってきた。
「良い香りじゃない」
 いつものバッグと丸めた大きめの方眼紙を小脇に抱えたアリスだ。
「アンタも飲む?」
「一口頂くわ」
 アリスは言うなり私から持っていたカップを取り上げて、カップに口をつけた。
「それ、私の……」
「濃くて美味しい」
「あ、赤の他人の飲んでいたカップの中のものを何で飲んだの…?」
虚を突かれた私は上手く口が動かなかった。
「アンタが飲んでいたものなら安心して飲めるからよ。毒見とか済んでいるわけだし」
 私が動揺しているのは明らかだった。当事者のアリスがこれに気付いていないのが不思議だけど、まあいいとする。
 私は話題を変えて動揺を隠すことにした。
「それで、飲むの?」
「一杯下さいな」
「わかったわ……小悪魔、カップをもう一セット用意して頂戴」
「かしこまりました」
 普段なら余計な一言を添えて登場してから仕事をこなす小悪魔だが、何故か今回は真面目に応答した。何か裏がありそうね。
 そんな私の疑いを余所に小悪魔はティーカップを運んでくると、
「それでは失礼致します。御用命の際はお呼び下さいませ」
そう言うと恭しく一礼して下がっていった。……魔理沙の落とした毒茸でも飲み込んだのかしら?……小悪魔が何を企んでいるのかについてはもう考えるのは止めた、不毛過ぎる。
 アリスが、また来るわと言って図書館を後にし、小悪魔もアリスを見送りに出て行ってしまった。
 図書館には私一人だけになり、思わず溜息を漏らした。
 最近の私は、どうかしている。字ではなく、アリスの動きを目で追いかけている。ハーブティーを飲まれたときもそうだ、あれくらいのことで鼓動が速くなるなんて絶対にどうかしている。最も、こうやってアリスのことばかりを考えていることが一番どうかしているのだけど。……もしかしたら小悪魔に感づかれてあらぬ誤解を招くかもしれない。
 感づかれる前に対策を講じておかねば。



「パチュリーさ~コピー代貸してよ~」
「そんなことのために呼んだんじゃないんだから」
 幻想郷一やる気のない巫女、博麗霊夢をここに呼んだのには勿論まともな理由がある。無気力が服を着て歩いているようなこの問題児にしか私の抱えている問題は解決できないだろう。多分コイツになら何を話してもバレないはず。他人に等しく無関心なこの巫女が、こんなことを口外するとは思えない。絶対コイツ興味持ってないはず(仮に聞き出されても忘れたとか言うに決まっている)。
 この言い知れぬ不調を一人で抱え込んだままではおかしくなってしまいそう。だがそれを小悪魔やレミィに悟られてはいけない。とすると絶対に話した内容が漏れない相手に打ち明けた方が安心できる。こんなのに打ち明けるのも癪だけれども。
 明らかに面倒臭そうな態度の霊夢に苛立ちを覚えるが、とりあえず話題を切り出す。このまま無駄に時間を費やしたら呼び出した意味がなくなる。
「霊夢、相談したいことがあるの」
「アンタらしくないアプローチじゃない、相談だなんて」
「そう、今の私は私らしくない」
「具体的にはどうアンタらしくないのよ」
「……アリスが来ると、ちょっと嬉しくなったり、思わず見入ってしまったり」
 本題に入った辺りで霊夢が図書館から出ようとした。
「ちょっと魔理沙呼んでくる」
「止めなさい、あんなのにバラされたら困るわ。あっという間にあることないこと広まるから」
「色恋沙汰なんて私にはどうしようもないことよ」
「い、色恋沙汰!?」
「魔理沙でなくてもわかるわよ、アンタの悩み事が恋愛関係だって」
 頬と耳が熱い。反論しなきゃいけないとは思うのだけれど、なんだか反論したくない私も居て。そんな私の顔をじっと見ていた霊夢がぽつりと一言。
「決まりね、立派な恋患い」
「ちょっと待ちなさい、私が?何を言っているのよ」
「じゃあアリスのこと嫌い?」
「なっ、き、嫌いじゃないわよ」
 胸の辺りがちょっとズキっとした、気がした。咳のしすぎで肺が痛んだわけじゃない。
 それにしても、霊夢がさっきからじいっと私の顔を見てくるが、一体何の意図があるのだろうか。疑問に思いつつもあえて口に出して聞かなかった。霊夢が思い出したかのようにこんなことを言った。
「ところで相談って何なのよ、アリスをオトしたいの?」
「この不調が一体何なのか、そして原因は何なのかを知りたかっただけよ。おかげで更に小悪魔やレミィに口外できなくなったわ、ありがとう」
 このことが知られたら、小悪魔は絶対いじってくるに違いないだろうし、レミィもレミィで面倒な騒ぎを引き起こしてくれるはず。いずれにしてもバレたら厄介なことには変わらない。
「原因がわかったなら、私はもうお役御免ってことでいいわね」
「乗りかかった船よ、原因をどうにかして私の不調を治すのを手伝って行きなさい」
「だったら最初からアリスをオトしたいって言えばいいじゃない」
「いやよ」
「何でよ」
「……なんだか、恥ずかしいんだもの」
「ぶっ」
 遠慮なく広辞苑で霊夢を殴ることにした。何も噴き出すことないでしょ。

 広辞苑アタックでダウンした霊夢はピクピクしているが、私が恥ずかしさを我慢して協力を求めたのだからしっかりと働いてもらわないと困る。
 それにしてもまさか霊夢が色恋沙汰(私のは本当に色恋沙汰なのかどうかよくわからないけど便宜上こう言っておく)に興味を示すとは思わなかった。興味を示したと言うよりも、積極的に関わろうとした、と言った方が正しいのかもしれない。
「起きなさい、霊夢」
 ダウンした霊夢の頬をぺちぺちと叩くと、霊夢がひどく不機嫌そうな目で私を見てきた。
「誰がダウンさせたのかわかってて言ってんの?」
「つべこべ言わずに協力しなさい、報酬は払うわ。ちゃんとね」
 途端、霊夢の目が輝いた。現金な巫女ね。

 こうして霊夢を半ば買収する形で協力させたのだけれど。
「……来ない」
 そう、霊夢を呼んだあの日からアリスが来ない。一日ならまだしも、振子時計の短針が明らかに六周以上回っている。毎日、ほぼ同じ時間きっかりに図書館を訪れていたはずのアリスが突然来なくなった。読み終わっていない魔導書もしっかり取り置きしてあるし、美味しいと言ってくれたあのハーブティーも用意してあるのに、アリスが来なきゃ意味がないじゃない。
 ここまで考えて、私はハッとした。……なるほど、恋患いってこういうことね。自覚してしまってから殊更酷いのもうなずける。
 アリスが来てくれるとちょっと嬉しくなったり、アリスが魔導書を読んでいるその姿に見入ってしまったり、アリスとの間接キスでドキドキしたり、こうやってアリスが来ないことにやきもきしたりするのも、恋患いだから、いや、アリスが好きだから。
 それにしても、一体アリスの身に何かあったのだろう。気が気でならない。
「どうしたのよ、そんな思い詰めた顔して」
「実際、思い詰めてるのよ。アリスが全く来ないものだから」
 私の様子を見かねた霊夢が話しかけてきた。どうしようもないわねぇ、といった素振りを見せた霊夢が、こんな提案をしてきた。
「だったらアンタから行けばいいじゃない……紫、このモヤシをアリスの家に飛ばして」
「あ、ちょ、何をするの……きゃあああ!?」
 提案は私の返事を待たずに実行されてしまった。霊夢がかの有名な胡散臭い妖怪の名前を読んだ途端、私の足元にスキマが現れ、その中に落とされた。行き先のメドはおおよそついていたけど、それにしてもこれはやりすぎじゃないのかしら。



 やっと無線式遠隔操作型の人形が完成した。パチュリーのおかげと言っても過言ではないと思う。この子たちなら魔理沙のレーザーで制御不能にされることなく、魔理沙を倒しきれるはず。まだ試験運用をしたわけではないけど、今まで以上に柔軟に弾幕を張れるようになったのは確か。
 魔理沙を倒したら、パチュリーにお礼しなきゃ。私の家に招待したら来てくれるかな。クッキー焼いて、一緒にお茶を飲んで……。
「おーい、アリス!魔理沙様が来てやったぞー!」
「それ止めなさい、馬鹿っぽいから」
 玄関の扉をガンガンとノックして私を呼び出すのは、あの白黒で間違いない。丁度いいわ、その鼻を折ってあげる……。

 おかしい、絶対におかしい。有線操作と無線操作を併用して三次元的な弾幕を張って魔理沙を追い詰めるという、私の目論見は充分に達成されているのに、まるで魔理沙に効き目がない。厳密に言えば、魔理沙は時折ミサイルで反撃するだけでほとんど回避に専念しているというのに、当の本人は涼しい顔をしている。私が圧倒的なアドバンテージを得ているはずなのに、これじゃあ私がおちょくられているみたいじゃない。
 苛立ちが人形達の操作に反映されたのか、弾幕や挙動にムラが出てしまった。当然、魔理沙はそれを見逃さなかった。反応の悪くなった人形たちの隙間を縫うようにして、私の編み出した包囲網から脱出した魔理沙は私の目の前にまで接近すると、八卦炉を取り出してこう言ってくれた。
「お前の敗因はただ一つ、弾幕を楽しめなかったことだぜ」
 確かに、ね……。
 マスタースパークに焼かれながら、心の中で魔理沙に同意した。

 またしても魔理沙に手酷くやられたけど、幸いにも人形たちへのダメージは微々たるもので済んで良かった。ただ、至近距離でマスタースパークを受けるのは流石に堪えた。
 魔理沙に『肩貸そうか?』と言われたが、それを断った私は身体を引きずりながら帰ることにした。
 人形たちに支えられながら、どうにか我が家の玄関にまで辿り着いた。そんな私を人形たちが心配そうに見つめる。相当にひどい負け方をしてしまったと痛感した。それに、この子たちに可哀想な事をしてしまったし、何よりパチュリーに見せる顔が無い。とにかく、今は受けたダメージを回復させなきゃ。
 自宅に入った途端に力が抜けて倒れてしまった。それでも、這うような状態で寝室を目指す。ボロボロとはいえ、廊下で寝るわけにはいかない。たとえ自宅でもそんな醜態をさらしたくはない。でも、このまま意識を手放しても良いかな……と思ったら。
「むぎゅ!?」
天井にスキマが現れて、そこからパチュリーが降ってきた。驚きのあまり目が覚めたけど、身体を動かすだけの余力は残ってなかった。
 この状態でパチュリーにどう応対しようか。間違いなくクッキーなんか焼けない。そもそも身体を起こそうとしても力が入らない状態で何が出来るのかわからない。どうしようか考えていると、私の顔を覗き込んできたパチュリーと目が合った。何故か赤面して目を逸らすパチュリー。自分から覗いたのに何で照れるの?
「来てくれたのは嬉しいけど、お茶もお菓子も出せないわよ」
「だ、大丈夫、だから……」
 何となくパチュリーの様子がおかしい。さっきからずっとそわそわしているし、何より顔が赤い。喘息の発作というわけではなさそう。
「……なんでこんなところで寝ているのかしら」
「ちょっと、ね」
パチュリーに今一番問われたくないことを問われた。口が裂けても魔理沙にやられたとは言えない。私の魔法使いとしての沽券に関わるし、協力してくれたパチュリーにそんなこと言えるわけがない。
 適当な言葉で誤魔化したけど、それで何かが解決したわけじゃない。スキマから出てきたことから察するにパチュリーは無理矢理飛ばされてきたみたいだから、帰ってくれなんてことも言い辛い。そんなことを考えていると、パチュリーがこんなことを言った。
「私に何かできること、ある?」

 別に無理しなくてもいいのに、と言ったのにパチュリーはそれを聞き入れることなく私をベッドまで運んでくれたり滋養強壮作用のあるスープを作ってくれたりと、甲斐甲斐しく私の世話をしてくれた。疲れきっているだけなのにここまでしてくれると逆に申し訳ない。やっぱり何かしらお礼をした方がいいのかも、魔導書のことも含めて。
「ねぇパチュリー」
「どうかしたの」
「お礼がしたいの、だからまたウチに来てくれる?改めてお茶とお菓子を振舞うわ」
 こくり、と何も言わずに頷いたパチュリーは耳も赤くて、なんだか少し可愛かった。



 それから一週間。
 魔理沙との弾幕ごっこで受けたダメージから完全に回復した私は紅茶とクッキーを用意していた。普段飲んでいるものより上等な紅茶と、久しぶりに焼いたクッキーは、パチュリーの口に合うかな。
 そこへ、呼び鈴が鳴る音が聞こえた。玄関の扉を開けると、パチュリーが何故か照れくさそうにして立っていた。いつものローブではなく、大胆に肩を出したワンピースを着ているからもじもじしているのか。
 入って、とパチュリーを招き入れると、そのまま客間へ向かう。
「アリスの家って、こんな感じなのね」
「こんな感じって、どういうことよ?」
「家中の壁という壁に人形が沢山並んでいるかと思っていたわ」
「貴女の図書館じゃないんだから」
「それもそうね」
 パチュリーも、他愛もないお喋りもしたり明るく笑ったりするんだなぁと思ってしまった。パチュリーだって人間……じゃない、魔女なんだから普通はそうじゃない。そうこうしているうちに客間に着いていた。扉を開けると、人形たちが飛び回っている光景が目に入ってきた。ティーポットやティーカップをどこに置けばいいのか迷っているみたい。
「アリス、この人形はどうやって操っているの?糸が見当たらないのだけど」
「無線式よ、魔理沙にワイヤを焼き切られないようにね」
「すごいわね」
「貴女の図書館でこの子達を動かすために色々調べ物させてもらってたのよ。感謝しているわ、パチュリー」
「……別に、私は何もしてないけど」
照れくさそうに頬をかくパチュリーに、感謝の気持ちくらい素直に受け取ってよ、とからかいの言葉を投げかけてみる。そうしようかしらね、とパチュリーが返した。
 お互いに椅子に腰かけ、クッキーと一緒に紅茶をいただく。
「口に合うかしら」
「美味しいわ」
クッキーを美味しそうに頬張るパチュリーなんて、なかなか見れないんじゃないかなと思うと、少し自惚れてしまう。
 それからずっと他愛のない話をし続けた。魔理沙の窃盗被害のことや魔法のこと、本当にとりとめのないことをずっと話していた。
 お皿に盛られたクッキーが残り二、三枚になった辺りで、パチュリーが話を振ってきた。
「あ、あの……聞いて欲しいことがあるんだけど」
「いいわよ」
 私が頷くと、パチュリーはさっきより少し小さな声で、しかもかなりの早口で言葉を紡ぎ出した。
「……貴女が図書館に来てくれると、ちょっぴり嬉しかった。ノートを広げてペンを走らせる真剣な貴女に思わず見入ってしまうこともあったわ。毎日のように来ていたのに、パタリと来なくなったときは心配で心配で仕方なかった。多分その間にワイヤ無しで動かす人形を造っていたんでしょうけど、あのときは何で倒れていたの?」
 怒っているのか恥ずかしがっているのかよくわからないけど、とにかくパチュリーは顔を真っ赤にしてまくし立てた。話の内容にまとまりがないのは、パチュリー本人も自分で何言っているのかさっぱりわかっていないからだと思う。明らかにパチュリーは取り乱しているし。というよりか、あのとき私が倒れていたことに疑問を持っていなかったことに驚いた。それだけ余裕が無かったからなのかもしれないけど。
「あのときは疲れてたの」
 やっぱり、素直に『魔理沙にやられてああなった』とは言えない。言いたくない。
「倒れて、自力で起き上がれなくなるくらい?」
「そうよ」
「……あんまり、無理しないで」
「へ?」
 思わず、気の抜けた声を出してしまった。てっきり追及されるのかと思って身構えていたのに、まさか心配されてしまうとは思ってもみなかった。
「毎日じゃなくてもいいから、その、図書館に来て欲しいの。貴女が来ないと、……寂しいから」
「……ふふっ」
なんだ、そういうことなのね。
「わ、笑わないでよ」
「ごめんなさい。でも、最初からそう言えばよかったじゃない。寂しいって」
「……アリスは出来るの?」
「無理ね」
「なら言わないでよ」
 私、パチュリーに惚れられたみたい。だから、あんな風に取り乱したのも納得できる。好きな人のことを心配するのは、当たり前よね。重ね重ねパチュリーに悪いことしちゃったみたい。
「ごめんなさいパチュリー、心配かけさせちゃって」
「私が勝手にしていただけだから、気にしなくていいわ」
「……また、図書館に行ってもいい?」
 パチュリーの手をとりながらこう尋ねると、
「うん」
私の手をぎゅっと握り返してくれた。
「今度は図書館でお茶したいわ」
「いいわね」
 パチュリーの嬉しそうな笑顔を見ていたら、私まで嬉しくなってきた。



 後日、図書館でお茶会をすることになった。招かれた私を出迎えてくれたのは、嬉々としているパチュリーだった。
 そんなに楽しみだったのね、と内心で呟く私に小悪魔が近付いてきて、恋する女の子は綺麗になるとはよく言いますが実際に恋をすると女の子って変わるものですね、とニヤニヤしながら囁いてきた。馬に蹴り殺されても知らないわよ、と切り返した次の瞬間には、小悪魔の眉間にペーパーナイフが突き刺さっていた。恐らくパチュリーが投げたんだろうけど、小悪魔はペーパーナイフを引き抜きながらニヤニヤしている。私たちをいじることを優先する辺りが小悪魔と言うべきかそうじゃないのか。
 小悪魔の相手をしていてはキリが無いと判断した私は、小悪魔を無視してパチュリーの元へ。
「いらっしゃい、アリス」
「お邪魔するわ」
 ふと、赤面したパチュリーのあの顔を思い出した。驚きと照れで満ちたあの顔を。確かにパチュリーの笑顔もいいけど、照れたパチュリーも捨てがたい。今、不意打ちを仕掛ければ確実に見れるはず。そう考えた私の行動は早かった。
「パチュリー」
「どうしたの?」
「好きよ」
 頬に口付けをすると、茹で上がったかのようにパチュリーの顔が赤くなった。初々しいパチュリーが可愛らしく思える。実際、すごく可愛いのだけれど。えっ、えっ?と戸惑うパチュリーの耳元で、ダメ押しの一言を呟いてみた。
「貴女のことが、好きで好きでたまらないわ」
 むきゅー、とパチュリーがのぼせてしまった。いけない、やりすぎた。





~ザ・グレイトフルあとがき~
 おはようございました。
 影月 涼(かげつき りょう)と申します。百合が好きすぎるあまり、回路が焼き切れそうな自称デストロン兵です(意味不明)

 いかがだったでしょうか?雛型となった最初の作品からかなり離れた内容となってしまいましたが、一応の完成を迎えることが出来て一安心です。こうして一編書き上げるために作成したプロットの紛失やその他諸々が重なって駆け足でこのあとがきを書いているような状況です。

 そうそう、私も一応は個人でサークルを持っております。厳密に言えば個人サークルですが。あ、そのまんまですね(苦笑)
 サークル名は『ガール・イン・ザ・ブック』と言います。もし機会がありましたら、そのときは何卒よろしくお願いします。

 どーでもいいのですが、頒布物として作品書いたのはこれが初めてだったりします。
 それでは、またどこかでお会いしましょう!

 それと、表紙の素敵なイラストを描いて下さったゆにさんに感謝します。ありがとう先輩ふぉぉぉぉぉぉぉ(自主規制)



~おまけ~
「私たちの出番はアレだけなのかしら」
「みたいじゃない」
「わざわざ出張ってきた甲斐がありませんわ」
「カメオ出演的な色が強いもの、今回の私たち」
「霊夢、貴女は台詞貰えたからいいじゃない。私に至ってはスキマだけの登場ですわ」
「でも、私たちがカメオ出演したからハッピーエンドを迎えたのかなと思うんだけど」
「私も霊夢と一緒に活躍したかった……」
「紫、その気持ちは痛いほどわかるわ。でも主役はアリスとパチュリーよ。この本はパチュアリ本だし」
「そんなぁ……」
「仕方ないわねぇ……ほら、胸貸してあげるから、私の胸で泣きなさいよ」
「れ、霊夢……あんまりおっぱい無いのに私のために……!?」
「私に泣かされたくなかったら黙りなさい」
「それじゃあ遠慮なく」
「ホント、調子いいんだから」
「ぅぅ……霊夢ぅ、すー……あぁいいにおい……ぐす」
「ちょっと、どさくさにまぎれて何してるのよ!?」
 やいのやいの……



「どこを見回しても春真っ盛りでやんなっちゃう小悪魔なのでした。それではごきげんよう、ばいばーい!」









[奥付]

・著者…影月 涼
・発行者…影月 涼
・発行元…パレット/ガール・イン・ザ・ブック
・印刷所…影月宅のプリンタ
・スペシャルサンクス…ゆにさん、この本を手に取って下さった貴方
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コメント
コメント
読ませて頂きました。残念ながら関東のイベントにはあまりいけませんが…!!

攻めるアリスも照れるパチュリーも非常にかわええ(*´∀`)
普段は見せず、ふとした時見える一面ってのは何故ああも魅力的なのか…。

何百年生きようが女の子は女の子。恋する乙女は無敵とはよくいったもので。
この二人を見たら俺も小悪魔並にニヤニヤする自信がございますww不可抗力ですwww
2012/04/22 (日) 03:00:22 | URL | クチナシ #-[ 編集 ]
Re:
>>クチナシさん
意地っ張りなアリスさんがいつの間にかイケメンになってて狼狽したのはココだけの話(

こあはそのうちに馬に蹴られそうですけどねぇ!!www
2012/04/22 (日) 20:46:56 | URL | 影月 #-[ 編集 ]
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