カゲツキくんは作り出した何かを全力で投下していきました。
二次創作系小説を書き散らかしつつ、個人的に興味深いホビー(TF系多し)について騒ぎ立てるブログだったのですが、最近では自分で何やってるのかよくわかってません。そんなカンジのブログです。
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らぶ・もこ・どぅ!
親愛なる我がフォロワー、筒教信者氏の誕生日を祝う目的で立ちあがった企画『福壽祭』。
多くの同志が集い、彼のために作品を仕上げました。
それに寄稿した東方二次SSを掲載する許可が下りましたので、アップすることにいたします。



あらためまして筒教信者氏、お誕生日おめでとうございます。これからも良き友人であり続けたく存じ上げます。









 この作品を読むにあたって諸注意がございます。
 よくお読みになってからお楽しみいただければ何よりです。

*この作品は上海アリス幻樂団の『東方project』の二次創作作品です。
*ところどころ独自の解釈に基づく設定の改変が見られます。
*同性愛(百合?)描写が見られます。
*その他多大なる問題を抱えています。







 上限の月が浮かぶ夜、しかし穏やかさは逃げ出していました。
 寺子屋の教師が教鞭を剣に持ち替え、迷いの竹林の竹を薙ぎ払いながら突き進んでいたのです。彼女の暴挙にも等しい進撃を食い止めようと妖怪ウサギたちが襲いかかりますが、ウサギたちの行動は焼石に水をかけるも同然。次から次へと撃墜されていきます。
 彼女は目的地、永遠亭に辿り着くと正面から堂々と乗り込みました。
 侵入者を迎撃すべく月のウサギが立ち向かったが、放った弾丸を撃ち返されて数秒とかからないうちにノックアウト。
 最後のウサギを退け、永遠亭の主の部屋へ向かいます。
 部屋の前に立つや否や、力任せに障子を引き開け、何の躊躇いもなく中に入りました。
「な、何よアンタ!?」
「頼みがある」
 畳に剣を突き刺し、動揺している永遠亭の主の前で突然正座しました。
 じっと、力強い眼差しで主を見る教師。
 しばらくの沈黙の後、頭を下げた教師の一言が、珍事の引き金となってしまいました。
「妹紅と仲良くしてやってほしい」
「……はい?」



~らぶ・もこ・どぅ!~



 石頭で有名な寺子屋の歴史教師、上白沢慧音。
 個性どころか我の強い人間や人でなしが幅を利かせる幻想郷において、彼女は個性が強くしかし生真面目な人間兼人でなしでありました。
 そんな慧音が夜更けに草薙剣を振るいながら永遠亭に乗り込んできたのです、ただ事ではないのだろうと構えた次の瞬間に
『妹紅と仲良くしてやってほしい』
などとのたまわれ、永遠亭の主である蓬莱山輝夜は困惑する以外の選択肢を喪失してしまいました。
 慧音の進撃によって生じた騒音で中途半端に意識が覚醒してしまった八意永琳がふらふらと部屋に入ってきました。開ききってない目をこすりながら、輝夜に向かってこう言ました。
「ひめさまー、夜ふかしなさっても別に構いませんけどおしずかにー」
「私じゃないから!そこに居るダイナミック訪問してくれたハクタクの仕業だから!」
「永琳めはもう寝ますよー」
 注意だけすると永琳は自室へと引き返していきました。なんとか永琳を止めようとした輝夜の声は見事に無視されてしまいます。そもそも届いているかどうかさえ怪しいところですが。
 頭を抱える輝夜に、慧音は話を再開させます。
「さて、私の頼みを聞いてくれるか?」
「どうしてそんな頼みをしたのか、ってことを説明しなさい」
「わかった。では話をしよう」
 姿勢を正し、改めて話し始める慧音。その表情は真剣さで満ちていました。
「本当ならな、私が妹紅の傍に居てやりたい。いや、居たいんだ。だが、私の一生など妹紅にとっての数瞬にすぎない。元々積極的に他人との関わりあいを持とうとしない妹紅のことだ、あっという間に独りぼっちになってしまうかもしれない。妹紅の理解者は私一人だけだと自惚れている場合ではないことに、今更ながら気付かされたのでな。こうして夜分遅くに頼み込みに来たわけだ。この無礼は許してくれ」
「竹林は荒すわイナバを全滅させるわ、挙げ句の果てに勝手に永遠亭にズケズケと乗り込んできてまで頼むことなの?それ」
「そうとも。これも妹紅のためだ。それに、お前にしか頼めんしな。何より私には時間がない」
 物好きねえ、と輝夜は溜息を吐きました。



 光あるところには影があります。善意あるところには悪意があります。それはどこでも変わりませんでした。
 慧音が永遠亭に押しかけてからの一部始終を盗み見している者が居たのです。
 札を額に貼られた、死体にしては血色のいいキョンシーの宮古芳香でした。
「青娥、首尾はどう?」
 そのキョンシーを従えている霍青娥は博麗の巫女こと博麗霊夢に呼び出され、博麗神社の壁からぬるりとその姿を現し、遠方で偵察させている芳香の仕事ぶりを報告しました。
「はい、上々でございます。順調すぎて寒気さえ覚えるほどに」
「紫が寝ている今は、冬なのよ?寒くて当然」
「左様で」
「引き続きテラーコン共に偵察させ続けなさい」
「キョンシーです。あと、一人だけです」
「明け方に報告をまとめて頂戴。私は寝るわ」
「承知しました……!」
 恭しく応対していた青娥は、霊夢の姿が見えなくなったのを確認すると、口元を歪ませて妖しく笑みを作りました。



「おはようございます」
「んあ……?けぇね……?」
 強い朝の陽射しが藤原妹紅を夢の中から引きずり出しました。
 夢の中に意地でも戻ろうとする妹紅の耳に誰かの声が飛び込んできました。妹紅はその声を彼女がよく知る人物のものであると、はっきりしない頭でそう解釈しました。
「青娥と申しますわ」
「せい、が……?って、なんだお前!?」
 だるそうに声のする方向に目を向けた妹紅でしたが、まるでにょっきり生えているかのように壁から上半身だけ姿を見せていた邪仙を目にすると、残っていた眠気が一気に吹き飛んでしまいました。
 口元を羽衣で隠しながら妹紅の驚く様子をじっと見ていた青娥がぽつり。
「そんなに驚かなくても。何もないところから出てくる方もいるのでしょうに」
「そういう問題じゃねぇ!ウチの壁ぶっ壊して何してんだ!燃やすぞ!」
「単なる壁抜けだからすぐに戻るわ、安心して」
「壁の心配してんじゃねーんだよこっちは」
「話をしに来ただけだからそのスペルカードを仕舞って下さいな」
 あからさまに不審な青娥を警戒する妹紅はスペルカードを仕舞おうとしませんでした。
 苦笑を浮かべる青娥はなんとか警戒心を解いてもらおうと新しい話題を持ち出しました。
「蓬莱山輝夜、ご存知で?」
「いっそ忘れたいくらいだわ」
「聞くところによれば、上白沢慧音を利用して何か謀をしているとか、いないとか」
 もちろん、青娥が話していることはでっちあげ、真っ赤なウソでした。
 輝夜の名前を出すだけで不愉快になるだろうから適当なことを言って煽ってきなさい、という霊夢の指示に従っていました。
 騙されているとも知らず、青娥の言葉を鵜呑みにした妹紅の反応は見事に霊夢が予想した通りでした。
「ざけやがって……!あいつ、また内臓ぶちまけられたいのか!」
「内臓を引きずり出すよりも、いい方法がありますよ」
 単純すぎる不死者を、邪仙は新たな一手で誘導しようとしていました。



 慧音が帰ってからというもの、輝夜は日課である盆栽の観察をすることさえも放り出して完全に部屋に引きこもって延々と考え事をしていました。
 慧音の話を要約するなら『自分の代わりに妹紅を幸せにしてくれ』ということであり、極端な話『妹紅のことは諦める』という意思表示でもあったと輝夜は勝手に解釈していました。
 かねてから妹紅を(どういう意味でかは言及しませんが)手に入れようとしていた輝夜にとってはまたとないチャンスでした。
 ですが、妹紅は慧音に懐いており、その上輝夜には千年来の恨みに由来する強烈な殺意を抱いているという最悪な状況は健在でした。
 時間さえかければ、それも改善できることでしょう。しかし、慧音が半人半獣の身である以上、時間的猶予はありません。あと何十年もすれば慧音は寿命を迎え、それまでに何かしらの手を打たなければ妹紅の心を持ち逃げされてしまいます。輝夜からしてみれば腹立たしいことこの上ありません。
 ですから、何か良い手はないものかと一人で頭を抱えているわけです。……その様子を何者かによって盗み見されているとも気付かないままに。



「季節は巡るわ。私の気持ちなんて知らないで勝手に去っていく。でもって、何事もなかったかのように戻ってくる。それを延々繰り返す。まるであいつみたいに。イライラするわ」
 鎖が繋がった陰陽玉、大量の対妖怪用御札と対妖怪用の針、そして大柄なショットガンが、どうしてか炬燵の上に整然と並んでいました。物騒な武器が陳列された炬燵に足を突っ込み、霊夢は独り言をぶつぶつとこぼしていきます。
「……冷えこんだらいっつもこれなんだから……はぁ」
 武器と武器の間に居心地悪そうに鎮座している湯飲みを手にとり、注がれていたお茶を飲む霊夢。喉を通ったのはすっかり冷めて渋くなったお茶。霊夢は不快感を露わにします。
「長生きする奴はどいつもこいつも図々しいのに、遠慮する必要なんてないのよ。どれだけ生きるのか知らないけど、そのうち勝手に忘れていくような奴ばっかりなんだから、しっかりと刻みつけてやらなきゃ」
 深い溜息を吐き、ぼけーっとした表情を浮かべてからこんなことを言いました。
「忘れられないくらい、傷つけてね」
 しばらくぼーっとしていた霊夢でしたが、何者かの気配を感じて炬燵の上に広げられた針を数本手にし、壁に向かって投擲しました。投擲された針は壁に刺さることなく弾かれてしまいます。
 先ほどまでの脱力した表情は霧散し、代わりに怒りが顔に出ていました。
「……盗み聞きしてたわね、待ちなさい青娥!」
 壁に潜んでいたと思われる青娥の気配は一瞬にして消え、霊夢は手当たり次第に武器を掴んで青娥を追うことにしました。



 師匠や先生でさえ走り回るほどの忙しさ、ということで師走という異名が与えられた十二月。この月の末日は晦日に大をつけるほどに重要視されます。残り十数時間で新年を迎えることもあり、人々はその準備に追われます。
 その準備の一つが大掃除。一年分の塵や芥やホコリやカスなどといった汚れの類を一切合切総決算するべく行われます。寺子屋でも当然行われ、そこで教鞭を持つ慧音と、時折彼女を手伝う妹紅が、普段掃除できないような場所を掃除していたわけですが。
「なーんでお前がここに居るんだよ。永遠亭でも大掃除やってんだろ、そっち行けよ」
「イナバたちが勝手にやってくれるからいいのよ。それに、なんだか妹紅の顔が見たくなって」
「気持ち悪っ」
 全くと言っていいほど寺子屋との関わりがないはずの輝夜が来ていました。
 不愉快極まりない輝夜を追い払いたい妹紅は大掃除そっちのけで口論を始めてしまいます。
「気持ち悪いって何よ!?ひどいじゃない!」
「気持ち悪いモンは気持ち悪いんだよ!なんだよ私の顔が見たいって!お前は慧音か!」
「いいじゃない、本音なんだもの!」
「何それ、裏がありそーですげぇ虫唾が走るわ!」
「裏とかないから!」
「なかったら逆に輝夜じゃねーよ!」
「信じてよ!」
「絶対にいやだ!」
 どんどんレベルが低くなっていく言い争いを繰り広げる輝夜と妹紅を無視してせっせと掃除していた慧音でしたが、ただ声が大きくなっていくばかりで意味のない言い争いを止めるべく動き出しました。
 手始めに妹紅と輝夜を引き離し、妹紅に渾身のヘッドバット(注:頭突きのこと)をぶつけます。慧音の石頭がクリティカルヒットした妹紅はその場に倒れてしまいます。その様子を見て明らかに動揺する輝夜もまた、ヘッドバットの直撃を受け、思い切り吹っ飛ばされてしまいました。
「いい加減にしろ!真面目に掃除するんだ!先生怒るぞ!」
 すでに怒っていた慧音はのびてしまった妹紅と輝夜を放置して掃除を再開するべく立ち去りました。
 先に復帰したのは妹紅でした。強力なことで有名な慧音のヘッドバットとはいえある程度は受け慣れているため、輝夜よりも早く復活できたのです。ちなみに輝夜はあらぬ方向に首が曲がっています。
 復活までもうしばらくかかるだろうと内心笑いながら輝夜を見ていた妹紅の背後に、壁からぬるりと現れた青娥が近付いてきました。口元に妖しい笑みを浮かべながら、妹紅の肩を後ろからトントンと叩きます。
 そのことに気付いた妹紅が振り向いたのを確認すると、青娥は妹紅に耳打ちします。
「以前お話ししました、蓬莱山輝夜の謀(はかりごと)……どうやら、貴女を娶るためのもののようで」
「はあ!?っざけんな!!誰があんなヤツに!!」
「あまり怒鳴らないでください。今あそこでのびている蓬莱山輝夜に起きてもらわれては困るのです」
 しーっ、と唇に人差し指をあてて静かにするよう妹紅に要求する青娥は、懐から濁った液体で満たされた小瓶を取り出しました。
「この青娥めにかかれば、慢心の塊に等しい姫の謀を覆すことなど赤子の手をひねるようなもの。貴女は私の言う通りに動けば、報いることは容易いでしょう」
「ほ、本当か!?」
 青娥は妹紅の手をとり、小瓶を握らせました。
「貴女に、約束された勝利の策を」



 妹紅は青娥の策を疑うことなく実行することにしました。
 小瓶の中の液体を食事なり飲み物なりに入れて慧音に摂取させればいい、ただし輝夜が目の前にいる状況で――青娥が妹紅に語った策の内容はこういったものでした。液体さえ摂取させれば後は全てが上手く行くと断言した青娥の言葉を信じた妹紅は、小瓶の中身を慧音の年越しそばの器になんとかして投入しました。
 図々しくも輝夜まで寺子屋で年越しそばをいただこうとしていたのですが、今の妹紅にとっては逆に好都合でした。
 さて年越しそばを食べ終えると食器を片付ける慧音と妹紅と輝夜の三人でしたが、初詣はどうするのかという話題で話し合って、もとい騒ぎ立てていました。妹紅はこの可愛らしい柄の着物を着るべきだとか、いや慧音が着るべきだとか、またしてもレベルの低い論争が始まり、今度は慧音もそれに参加していました。
 青娥の指示通りに行動した妹紅は結果を待ちながら、むしろギャップ効果で慧音の魅力が、と慧音に着物を着せようと抵抗していました。
「そうか、なら仕方あるまい」
 すくっと立ち上がる慧音を怪訝な顔で見る妹紅でしたが、何の前触れもなく慧音の衣服と髪の変色が始まったのを目の当たりにすると、目を見開きました。確か、今日は満月ではないはずなのに。
 被っていた帽子を弾き飛ばすようにして、慧音の側頭部から一対の雄々しい角が生えてきました。お尻からは、妹紅曰くもふりたくなるという緑色の尻尾が。
 立派な角と尻尾、緑色の髪――月に一度、慧音が変身するハクタクとしての姿への変身が完了してしまいました。
 爛々と輝く赤い眼が妹紅を捉えたかと思うと、慧音はちゃぶ台を乗り越えて妹紅を押し倒してしまいます。
「実力行使だ!」
「待て待て待て待て!わかった、着るから!着るから降りてくれ!」
「聞く耳持たん!」
 そのまま馬乗りになって妹紅のブラウスを文字通り剥ごうとした慧音を、輝夜は羽交い絞めにして阻止します。
「ちょっと、アンタ何してんのよ!?」
「私だってなぁ!お前みたいな没落貴族なんかに妹紅を任せたくないんだぁ!!」
「妹紅だって没落貴族よ!」
「お前はプー同然だろうが!」
「誰がプーよ!……って、うわぁぁ!?」
 ハクタクとはそもそも、人語を話す神獣のことを言います。ハクタクとしての性質を持った今の慧音は妖獣も同然であるため、輝夜の腕を振り払うことなど容易いほどの膂力をも持っていました。
 普段は穏やかな人なりな慧音もこの姿になる途端に血の気が多くなり、好戦的になってしまうことから、一部の人間からは更に面倒臭くなると評され、大多数の人間からは恐れられています。
 ですが、このハクタクとしての姿を見せるのは満月の夜だけ。月は丸くないのにどうして変身して自分の身体の上に乗っているのだろうかと焦りながら妹紅は思い返します。何か原因になりそうなことは無いかと。
「……って、おいコラ青娥!お前の薬のせいか!」
 思い当たるとすれば、やはり食事に入れた、あの小瓶の中身。そして小瓶を渡したのは青娥。
 妹紅の怒鳴り声に応じるようにして、その青娥が壁からぬるりと姿を現します。
「もう、あと一歩で成功するというのに、今軍師を呼ぶとはどういうつもりですか?策は完璧過ぎるくらい順調に進んでいるでしょう」
 わざとらしく肩をすくめる青娥に、今度は輝夜が怒鳴りました。
「策ぅ!?何よ、アンタなんかにこの、蓬莱山輝夜の恋路を邪魔されてたわけ!?ふざけるんじゃないわよ!」
「我が主、博麗霊夢の命ですから」
「れ、霊夢が……?」
「『どのような手を使っても構わない、藤原妹紅と蓬莱山輝夜を引き離せ』と」
 青娥は羽衣で口元を隠しながら、ではあとは若者同士でごゆっくり、と言って壁の中へ戻ろうとしました。
 しかし青娥の逃走は力任せに襖を開け放って乗り込んできた霊夢によって阻まれてしまいます。
「そんな命令いつしたのかしら、ねぇ青娥?」
「霊夢……!何故ここに!?芳香が出入り口を守っていたはずなのに……!」
「頑丈なだけじゃ話にならないのよ」
 霊夢はそう言うなり青娥の鳩尾に陰陽玉を叩きつけて怯ませると、彼女の首根っこを掴んで寺子屋の外に放り出してしまいました。そして背中に担いでいたショットガンを手にすると、
「スペルカード『夢想封印―銃』」
スペルカードの発動宣言を行って引き金を引きました。
 ショットガンの銃口からは七色に光を放つ弾丸が発射され、続いて青娥の哀れな悲鳴と爆発音がご近所中に響き渡りました。
 爆発音に反応した慧音は肌蹴た妹紅の白い素肌を舐めまわすのを止め、妹紅を守ろうと身構えます。
「……青娥、やってくれるじゃない。慧音にしか薬が効かないのをいいことに媚薬盛らせるなんて。しかも、それに慧音の変身を強引に促す効能を持たせるとか、どこまで手先が器用なのかしら」
「び、媚薬!?」
「私の名誉のために言っておくけど、私が青娥にやらせたのは永遠亭の監視と妹紅の誘導だけで、『妹紅と輝夜の仲を裂け』とも『手段を選ぶな』とも言ってないわ。私はただ『妹紅と慧音をくっつけろ』と言っただけ。……それがどうしてこうなったんだか、さっぱりよ」
 慧音に媚薬を持ってしまったと慌てふためく妹紅を余所に、霊夢は陰陽玉に付けられた鎖を手繰って回収しながら輝夜の方を向きます。
「気に食わないことは気に食わないとはっきり言ってやらなきゃやってらんないわ。そうでないと私の幻想郷で好き勝手する奴がどんどん湧いてくるのよ。……話をまともに聞いている方が少ないから殴って聞かせるのがほとんどなんだけど」
 じゃらり、と鎖が音を立てると同時に霊夢の口元が歪みました。
「さて、色々と邪魔が入ったけど、この状況は逆に使えるわ。……でもアンタだけは邪魔なのよ」
 ショットガンの銃口を輝夜に向けると、霊夢が慧音に向かって、
「アンタの恋路を邪魔する虫けらは私が駆除したげるから、ゆっくりしっぽりやって頂戴」
なんてことを言ってしまうものですから、妹紅の服が剥かれる作業が再開されてしまいました。
 スペルカードを取り出して対抗しようとした輝夜でしたが、手にしたスペルカードをショットガンの銃撃によって取り落としてしまいます。
「これで終わりよ」
 霊夢が陰陽玉を構え、輝夜に殴りかかろうとしたその時でした。
 この時期には絶対に見るはずの無い、内部で数多くの目玉や手が蠢く空間の歪み――通称『スキマ』が出現し、霊夢の両手両脚を飲みこんで拘束してしまったのです。
 武器と四肢の自由を失った霊夢はひどく動揺しました。自分にこんなことが出来るのは広くて狭い幻想郷ではたった一人しかおらず、その妖怪は冬眠しているはずなのですから。
 新たに出現したスキマは、霊夢を無力化した妖怪を吐き出しました。
「幻想郷の愉快な住人の皆様、あけましておめでとうございます」
「紫……!?」
 幻想郷の賢者こと、すきま妖怪の八雲紫でした。
 紫は拘束した霊夢が未だに抵抗する様子をじっと見ていました。それが気に食わない霊夢は紫に反抗します。
「なんでアンタ起きてんのよっ」
「霊夢のおいたがすぎるものだから起きてしまったわ。そんなわけで、貴女にはお仕置きが必要ね」
「……冬眠していたはずのアンタがいきなり出てきて巫女を拉致ろうとするなんて、ずいぶん元気じゃないの?」
「拉致だなんて、心外ですわ。お仕置きのために寝床に連れて行くことは拉致するとは言いません……それより、私に刻みつけてくれるんでしょう、貴女を。忘れられないくらい、傷つけて」
「アンタも盗み聞きしていたわけ?」
「破廉恥な邪仙を従えている貴女が心配だったの」
「実際、とんでもない性悪だったわ。使えたけど」
「どんな思いでスキマから貴女を見ていたのかわかりまして?」
「どんな思いで私が冬を過ごしているのかわかってるわけ?」
「えぇ、わかりますわ。だって、素直に語ってくれたじゃない。貴女の口から、直接。……でも一回じゃ足りませんわ。だから、もっと語って頂戴、私にだけ」
 パチン、と指を打ち鳴らすと、霊夢を全身丸ごとスキマに飲み込ませました。
 続いて、扇子を取り出して虚空を一閃し新たなスキマを作り出すと、そこから彼女の式神である八雲藍を呼び出しました。
 呼び出された藍は吹き矢を手にしており、それを妹紅に跨っている慧音に向けて一吹き。吹き筒から発射された針が慧音の首に刺さると、妹紅の身体にのしかかるようにして倒れ、同時に変身が解けてしまいました。
 慧音の意識が飛んだことを確認した藍は慧音を引きずって部屋の外に出て行きました。
 唖然とする他ない輝夜に向かって大袈裟なお辞儀をした紫はまたしてもスキマを形成して広げます。
「さぁ、これにてお役御免でございますわ――撤退するわよ、藍」
 紫はその中へ飛び込んで撤収してしまいました。



 輝夜を陥れようとしその上で妹紅を利用して慧音に媚薬を盛った青娥、青娥を粛清し輝夜を排除しようとした霊夢、そして発情して妹紅に襲いかかっていた慧音が退場させられ、部屋には肌蹴た衣服を直す妹紅と、彼女から目を逸らす輝夜だけが残っていました。
「も、妹紅……!」
「あによ」
 せっかく慧音と大晦日を過ごそうとしていたのに輝夜やその他に邪魔されてしまった、と不機嫌そうな妹紅。
 どうやって切り出すかを思案していた輝夜は意を決します。
「き、聞いて欲しいことがあるの」
「勝手に言ってろ」
 眉間に皺を寄せる妹紅に輝夜の話を聞く気はないようでした。ですがこの程度のことは容易に予想できた輝夜は構わず続けます。
「つい何日か前の話よ。ウチのイナバたちを全滅させて慧音が永遠亭に乗り込んできたの。それも真夜中に」
「へぇ、慧音が。……で」
「どうしてこんな時間にアンタがそんな乱暴なやり方でここに来たのかって聞いたわ。あのハクタク、こう言ってきたのよ。妹紅のためだって」
「私のため……?なんでそこで私の名前が出てくるわけ?」
「アンタ、人付き合い苦手じゃない」
「これでもまともになった方だ」
「慧音のおかげでしょ?」
「そうさ」
「普通の人間よりかは長生きしても、それでも慧音は死ぬ。アンタを置いてね」
「……わかってる、そんなことくらい」
 しかめっ面だった妹紅の表情に陰りが見えました。寿命の話は妹紅にとって一番不愉快な話題でした。
「だから、私に頼んできたの。妹紅を独りぼっちにさせないために、仲良くしてやってくれって」
「知るか、そんな眉唾な話なんか。もし本当だったとしても私はお前と仲良くしなくても問題なんかないし、独りでも構わない」
「それは嘘ね」
「あ?」
 妹紅の関心を向けさせることに成功した輝夜は、仕上げにかかりました。
「私は独りぼっちになったことなんかないから、どれくらい辛いとか寂しいとか、そういうのはわかんない。でも、慧音に出会う前と出会った後のアンタが変わったことくらいわかる。ねぇ、慧音と出会う前の自分に戻りたいわけ?」
「……とことんムカつくな、お前」
「ムカついてもいいわ。さっきの、慧音が頼みごとしてきた話を信じてくれなくてもいい。でも、今から言うことは間違いなく本当のことよ」
 不意打ちするかのように妹紅に抱きついた輝夜の長い黒髪がなびきます。
「お、おい!?」
 戸惑いを隠せない妹紅の背中に腕を回し、愛おしそうに抱きしめる輝夜は、普段なら絶対に言わないことを口にします。
「私は今の妹紅が好き、大好き。妹紅が今の妹紅であり続けるためなら、私はなんだってする」
「輝夜……」
「お願い、慧音みたいないい女じゃないけど、一緒に居させて欲しい」
 輝夜は妹紅の背中に回していた腕を離し、妹紅との間に少しだけ距離を作ります。そんな輝夜の肩に左手をそっと置いた妹紅は輝夜……とぽつり。
 妹紅の瞳をじっと見つめていた輝夜を、強烈な妹紅のフックが襲いかかりました。
「……んなんで私をオトせると思ってるんじゃねぇぇぇ!!」
「うまくいったと思ったのにー!!」
 新年早々に宙を舞う輝夜に、恥ずかしさで顔を真っ赤にしている妹紅の顔が見えませんでしたとさ。



おわれ





~おまけ~



「まさか霊夢直々に出向いてくるなんて……」
「だいじょーぶ?」
「うん、まあ大丈夫よ。手加減してくれなかったら今ごろ死んでたろうけど」
「青娥もゾンビに?」
「ならないから」
「そっかー」
「芳香は頑丈だろうからあれくらい平気でしょう」
「起き上がれなくなったけどね」
「だから柔軟体操なさいって言ってるの」
「はーい」
「それはいいとして。伊達に博麗の巫女やってないみたいね、霊夢は。豊聡耳様と張り合うだけの実力に加えて知略に長けていたなんて」
「力任せな巫女だと思ったのに」
「そうね。でも詰めが甘い。勘が鋭すぎてやられちゃったけど」
「ねー」
「それにしてもタオをあそこまでアレンジして強力な武器にしていたなんて思いもしなかったわ。あのセンスの高さ、とても魅力的だわ……!!」
「アレってタオだったんだ」
「元々はね。ずいぶん乱暴なカンジになっているからそうは見えないだけで」
「でも、そんなの、あの巫女から教われるの?」
「無理。でも、近付いて利用することなら出来るはずだと踏んでモノにしようとしたら……」
「あの金髪の胡散臭いのが出てきたんだね」
「まさか先を越されていたとは思いもしなかったわ。それも妖怪に。だから冬眠していない今を狙ったら……」
「連れ去られちゃった」
「……ほんとに思い出すだけでくやしぃぃぃっ!せっかく巡り合ったあの巫女、なんとかして手に入れようとしたかったのに邪魔されてーっ!きぃぃぃーっ!」
「せ、青娥?」
「芳香、行くわよ!力に魅入られた以上、諦めるわけにはいかないわ!」
「まだやるの?」
「つべこべ言わない!絶対に手に入れてみせるんだからー!霊夢ー!!」
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コメント
コメント
今回の霊夢は慧音先生の恋路を応援していたようですね。自分と紫様の境遇と照らし合わせて彼女らを見ていたんでしょうか(´∀`)

何故でしょうね、幻想郷には恐らく存在していないはずのショットガンが霊夢にものすごく似合うのは…ww

今は
輝夜→妹紅→←慧音
な関係ですが、この素直な輝夜ならいずれ慧音先生も満足して任せられるような関係になれば慧音先生は本望……だけど少し寂しくもなりそうで。
なんにせよ、妹紅は幸せものだww
2012/04/27 (金) 18:54:49 | URL | クチナシ #-[ 編集 ]
Re:
>>クチナシさん
霊夢さんどんどん武器が凶暴化していくのに今回は恋路の応援というギャップ効果をry

慧音先生はこれから先起こり得るであろう愛しい人との離別に備えてこういうことしたわけですけど、色々と面倒なことに……w
もこたん永遠に幸せになればいいんじゃないですかね!!
2012/04/29 (日) 21:02:44 | URL | 影月 #-[ 編集 ]
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