カゲツキくんは作り出した何かを全力で投下していきました。
二次創作系小説を書き散らかしつつ、個人的に興味深いホビー(TF系多し)について騒ぎ立てるブログだったのですが、最近では自分で何やってるのかよくわかってません。そんなカンジのブログです。
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【オリジナル】鉄の女【百合風味】
SA002が復活を果たしましたが特に今回の話とは関係ありません。
前回の話の設定を引き継いでいますのでお読みいただければ幸いです。






 なんだってこんな暑いんだろう。太陽は核融合の出力を抑制すべき、と抗議するつもりはない。自重するべきは高気圧だと思う。流石に核融合止めちゃいけない。太陽光の恩恵を受けている人々が苦しむ。雨さえ降らないくらい屈強な高気圧がいけないんだ。定期的に雨が降れば多少はマシになるはずなのに。
 Tシャツが自分の汗で濡れて重くなる。なんと不愉快なことか。有名なメーカーのロゴがでかでかとプリントされてるこのTシャツ、色が濃いからブラジャーが透けてしまうことはないから、不幸中の幸いかもしれない。
 夏休みに入る前、ブラウスの下からブラジャーが透けてるよ誘ってるんだね!と突撃してきたアホにホックを外されたのを思い出した。追加攻撃でブラウスの中に腕を侵入させてナマチチを揉みしだこうとする前に殴って黙らせたが。
 ああなんて平和なんだ夏休み。気が緩む。そして輻射熱で溶ける。アスファルトとコンクリートは熱を吸収するのを止めるんだ。ジーパンの中が蒸れる。さっさとバイト先に行って給料貰って帰ろう。
 しかし私は忘れていた。アホは一人じゃない。
 進路上にふわふわパーマの長い黒髪を揺らして歩く、お嬢様と呼ばれていそうな豪奢な服を着た小柄な女性が現れた。幼く見えるお嬢様の隣には燕尾服を着た女性がいる。はちきれんばかりのワガママボディーに金属然とした銀髪の彼女はボディーガードってところか。ボディーガードはお嬢様のために淡い桃色の日傘を差している。私には似合わないだろうな。羨ましい。仮に似合ったところで金銭的な余裕は、ない。目頭が熱くなる。顔が日光で炙られて熱くなってるだけかもしれない。
 暑さで色々やられたのか、向こう側からやってくるお嬢様が私に手を振ってくるように見える。蜃気楼か、蜃気楼なのか。
 どう返したものか悩んでいると、手をメガホン代わりにしてお嬢様が声を張った。
「あっちゃーん!どーして無視するのー!」
 うん、私ダメっぽい。お嬢様の口から悠の声が聞こえる。日陰に逃げよう、そして壁沿いにある自販機でスポーツドリンク買おう。
「あっちゃーん!アタシだってば、悠だってばー!」
「人違いじゃないんですかー」
「人違いじゃないってー!終業式にまりりんに性的な意味で食べられそうになったの知ってるんだからー!」
「ッ!?」
「しかも満更でもなかったのも」
「わかった!わかったからそれ以上は勘弁して!」



 お嬢様チックな悠に公開処刑されそうになった私は、バイト先で涼みながら悠とボディーガードと話をすることになった。半ば脅された形だけど。
 いつもの三つ編みと眼鏡はどうしたんだと聞くと、コーラフロートのアイスを削ぎ落としながら答えてくれた。
「だってー、あの学校バカばっかじゃーん。学校の外で会って絡まれたら嫌でしょー?アレ学校用の変装なの。プライベートはこんなカンジだよ?」
「お前お嬢様っぽいのになんで公立に来てんだよ。お嬢様っぽいのが通ってる私立あるらしいからそこ受ければよかったのに。そうすればそんなこと……」
「……落ちたの」
「ごめん」
 お前もバカだろ、なんて言えない雰囲気である。
 髪型変えて眼鏡かけるだけでこんなに印象違うんだな、としみじみしていると、お冷にすら口を付けていないボディーガードが視界に入った。飲まないのかな。
 私の興味がボディーガードに移ったのを悟った悠が、勝手にボディーガードについて語り出してくれた。
「あっちゃんは霧島が気になるのー?」
「霧島?」
「この子の名前だよ」
「名字じゃんか」
「茶○鈴とか優○とか○OUとか、そんなカンジだと思ってー」
 手を打って納得してしまった。なんかむかつく。
 悠の説明を補うためか、ここまで一言たりとも言葉を口にしなかったボディーガードこと霧島が喋った。
「形式番号MDHM-38AN、パーソナルネーム『霧島』。悠お嬢様の護衛と勉学の補助を任されています」
 ノイズの混ざったハスキーボイスで自己紹介をした霧島。まさかこいつ……人間じゃ……ない。
 瞳の色は赤紫でレンズみたいな模様の瞳孔で、見れば見るほど人工物のように思える。喋りは滑らかなのに、肌はきめ細かいのに、人間っぽくない。髪なんかこれ何かのケーブルじゃないか。お冷に手を付けないのも納得出来る。こいつロボットだ。唖然とするしかないというか、思考が追いつかないというか。
「霧島はガイノイドなんだよ!」
「ガイノイド?」
「アンドロイドの女性バージョンだね」
 金持ちはやることが違う。歩くSFを侍らせて日々を過ごしてるなんて。もっと違うことに金使わないのか。
「OS(オペレーティングシステム)はこれと一緒なんだ」
 胸を張った悠が可愛らしいバックから、某食べかけの林檎社からリリースされてる携帯音楽プレーヤーと高性能携帯端末を融合させたものを取り出した。スマートフォンと同じOSで動くガイノイドってすごいのかそうじゃないのかよくわからない。
「ボディーの素体はAS○MOだって父さんが言ってたー」
「これのどこがASI○Oベースなのさ!?」
「知らなーい」
 事実は小説よりも奇なりとは言うけどこれはもう奇怪の上を行ってる。落ち着くためにキャラメルマキアートに口を付けると、悠は霧島のスペック紹介を続行する。
「そんな霧島だけど、抱きつくと柔らかいんだよー」
「そうか」
 目の前で実際に霧島に抱きつく悠に視線をやらずに、封筒の中に入っている紙幣の種類と枚数を数えることにした。ざっと諭吉大先生二人と野口先生九名。一葉先生混ぜようよ店長。
「悠お嬢様、半径五百メートル圏内にあるラブホテルを検索し十三店舗ヒットしました」
 霧島の音声を聞いて本日何度目かわからない思考の混乱が発生した。
「ムラムラしてないよ霧島ー。あっちゃんはまりりんのお嫁さんだってー」
「待て悠誰が誰の嫁だ」
「半径五百メートル圏内にある式場を検索しましたがヒットしませんでした」
「霧島も待て」
「申し訳ありません。神前婚の場合も考慮して検索しましたが神社も……」
「いい加減にしないか!」
 余計なお世話だ。第一結婚するだけの余裕もないぞ。
 しかしながら、目の前の級友はこれまでの経験から考えても私が声を荒げたくらいでは止まらないような、突っ走る女である。同時に私の経験則を裏切ってくれないことにも定評がある女だ。当然私の期待を裏切り、突っ走る。
「あ、そっか。ごめんねー、まりりんのこと忘れてたよー」
「悠お嬢様、マリ様名義の携帯端末に搭載されたGPSの位置特定が完了しました」
「そうじゃなくて……」
 即座に霧島はマリの位置をGPS経由で調べたらしく、悠に耳打ちしている。プライバシーもへったくれもないガイノイドだ。恐ろしい。
 科学技術の無駄遣い及び悪用がまかり通っている現場を目の当たりしながらキャラメルマキアートを飲み干すと、私のケータイが振動する。メールが届いたみたい。あーでもないこーでもないと言い争う悠と霧島は放置しても問題ないだろう。介入しても状況の変化は望めないし。
 ケータイを開き、メール受信ボックス画面を呼び出して送信者を確認する。マリだった。タイトルはなし。本文を開くと、こんな文面が目に。
『たすけて ごうとうきた』
 なら私にメールするんじゃなくて警察に電話しろよ。国家権力は伊達じゃないんだぞ。
 返信する気が起こらず、私はそのままケータイを閉じた。溜め息を一つ零して顔を上げると、目の前に居たはずの悠と霧島の姿がなかった。どこに行ったのかと思えば私の背後だった。
「助けに行かないのー?」
「どこに行くかわからないのにか?」
「半径七百メートル圏内にて銀行強盗による強盗事件が一件発生している模様です、悠お嬢様」
「確かまりりんもそこに居たよねー」
「えぇ」
「……まさかとは思うけど」
「うん。まりりん巻き込まれたんじゃないかな」
 呑気に言ってる場合か。私は改めてケータイを開いて一一〇をダイヤルしようとしたが、悠に止められた。
「連絡ならもう霧島がしたから大丈夫。それより心配なことがあるんだ」
「何だよ」
「まりりんが暴走するかもしれないってこと」
 はっきり言ってそのことを否定できなかった私は迅速に会計を済ませ、悠と霧島を連れて店を飛び出した。
 大人しくしててくれ……マリ……!!



 私の儚い願いというのはどうも簡単に打ち砕かれる傾向にあるようで、たんこぶを作ってガラスの破片が撒き散らされた道路のど真ん中で倒れているマリの姿を見て血の気が引いた。
「マリ!!」
 思わずマリの名前を叫び、マリの元へと駆け寄った。幸い出血とかはないようだ。
 しゃがみこんでうつ伏せのマリの身体を揺すって、何度も名前を呼ぶ。
「……この声は、あすか」
「マリ、大丈夫!?」
「大丈夫なわけないじゃん!!」
 突然の復活を果たしたマリは跳ね起き、ちょうど人型の穴が開いた銀行の二階部分のガラスを指差して怒鳴る。
「まだ妹が、サリが中に居るんだって!」
「はあ!?」
「どうしよう……!!せっかくバイト代入ったからサリにいいお姉ちゃんっぽいことしてやろうかなーって銀行に来たのに……!!」
 頭を打っても相変わらずの様子のマリに思わず安心してしまった私はきっと毒されているんだろうけど、コイツの妹がまだ中に居るという危険な状況でそんなことは言えない。盾を持った機動隊みたいな人たちが銀行の一階部分の出入り口を囲って塞いでいる以上、私たちには何も出来ないが。
 どうしようどうしようと連呼してパニックに陥るマリをなんとかして落ち着かせないと。これ以上怪我を増やさせるわけにはいかない。マリにつられるようにして私も焦り出した。
「あすかぁ、あすかぁー!」
「うるさい!私だって考えてるんだから!」
 結果的にいつも通り、物理的に黙らせることを選択した私はマリに頭突きした。きゃいん!と犬みたいな声を出して怯むマリに、私は言い聞かせた。
「いい?強盗が何人いるかどうか私は知らないし、警察も機動隊も来てるんだからここで騒いだって何も変わらないんだって!」
「でも……!強盗が銃持ってた……!」
「尚更でしょ!私たちは黙って見てるだけでいい!だから落ちつけ!」
「そうそう。こういう時冷静じゃないとあっちゃんに嫌われちゃうよー」
「あ、悠……」
 悠がニヤケ顔で私とマリの会話に割り込んできた。こんなときにニヤニヤしてるのもどうかと思うんだけど。
 憎たらしい形の口元の悠の傍らに居たはずの霧島は何故か居なかった。今度はどこに行ったんだ。
「話は聞かせてもらったよん!妹ちゃん助けたいんでしょー?」
「う、うん」
「も少ししたら霧島が連れて戻ってくるから、それまで存分にイチャイチャしててー」
 だからこの非常時に何を言ってるんだって抗議しようとした次の瞬間だった。
 銀行の二階部分の割れたガラスの穴から何かが飛び出し、向かい側のビルのガラスに突き刺さった。その場に居た警察から野次馬に至るまで、全員がにわかに騒ぎ出した。
 続いて窓ガラスが更に割れ、穴が大きくされる。最後にそこから霧島が飛び出した。左腕でマリの妹、サリを抱きかかえ、右腕から伸ばしたワイヤーを使って向かい側のビルの壁に飛び移り、勢い良く着地。
 銀髪に見せかけた頭のケーブルから湯気を出しながら、霧島が言う。
「悠お嬢様、サリ様の救出完了しました。犯人グループは全員、体温低下で沈黙させましたので、救急車の方を」
「おっけー。じゃあ、行こっか」
 悠は霧島の進言を無視して救急車を呼ぶことなく、この場から立ち去ろうとした。



 県民センターへ移動した私たち。警察やマスコミに捕まると面倒だから、という悠の一存によりここまで来たんだけれど、大丈夫か。
 職員さんの御厚意で氷入りのビニール袋を貰ったので、それをマリのたんこぶにあてがっていると、悠が口元から涎を垂らしながら私たちを見てきた。
「何だよ」
「弱ってるまりりんの世話するあっちゃん可愛い」
「ばーか」
「照れ隠ししちゃってー、もー」
「ゆーうー、あすかをあんまりいじらないでよぉ。私にまで被害きちゃうじゃん」
「人の善意を何だと」
「ごめんなさい」
 奇跡的にも霧島に助けられたサリは掠り傷一つ付いていなかった。
 一方で愚かな姉は、妹を逃がすために囮になろうして誤って二階から窓を突き破って転落してたんこぶを作ったそうだ。溜め息が止まらない。
 そんな空回りが度を越して自滅した姉には目もくれず、サリは髪から湯気を出したり腕からワイヤー出したりと人間業とは思えない(実際人間ですらない)活躍で救出してくれた霧島に構ってとせがんでいた。
「ねぇねぇお姉ちゃん!」
「霧島とお呼び下さい」
「霧島お姉ちゃん!さっきは助けてくれてありがと!」
「悠お嬢様からの命令ですから」
「ところで、何で髪の毛から湯気出てたの?」
「私の動力源は熱なのですが、ボディ等から発生した熱を直接エネルギーとして使用することが出来ないため、一度外部に放出する必要があるのです。効率よく放熱できる部位が人体における髪に相当する部位だったため、このような仕様になっています」
「よくわかんないけど、すごいね!」
 オーバーテクノロジーの塊のような霧島に興味津津なサリを見て、マリがぐずり出した。
「ううう……ガイノイドに負けたよぉ」
「安心しな、あんなのに勝てるのは二次元だけ」
「お姉ちゃんは私なのにー!」
「もう一発行っとく?」
「すいませんでした」
 限りなく自業自得とはいえ、涙目で擦り寄ってきたマリを足蹴にするにはいささか不憫すぎたので、頭を撫でて甘えさせることにした。



 後日。
 バイト先から帰る道中で、サリが霧島と手を繋いで歩いているのを見かけた。マリには黙っていようと考えていると、立て看板の後ろからサリと霧島の様子をピーピングしている悠の姿も発見した。
 警察呼ぶかどうか本気で悩んだ。
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